空気抵抗の正体とは?

 

出典:アイルトン・セナ

 

サルでもわかる「空力」講座ということで、車の空力に特化した内容を取り上げていきたいと思う。そこで空力を考える上で非常に重要になってくる、「空気抵抗」について取り上げていきたい。

 

人が歩いたり走ったりするくらいではほとんど感じることのできない「空気抵抗」。果たしてその正体とは一体何なんだろうか?

 

空気抵抗の大小はCD値で表す

 

出典:トヨタ

 

流線形が最もCD値が低く、平板や円柱はCD値が高い

CD値とは空気抵抗係数のことを表しており、CD値が大きいほど空気抵抗が大きく、CD値が小さいほど空気抵抗が小さいと考えてもらえばOKだ。CD値が最も小さい流線形はわずか0.04であるのに対し、平板や円柱は1.2程度となんと30倍も空気抵抗が大きいのである。

 

水中での動きやすさで考えてみるとわかりやすい

 

出典:マグロ

 

陸上では速く走れるのに、プールや海などの水中では速く走れなかったという経験はないだろうか?これは空気に対して水の抵抗が約1000倍大きいからである。プールや海でビート板を進む向きと直角にして泳ごうとすると全然前に進めなかったはずである。これはビート板が「平板」の状態になっており、最も抵抗が大きい状態であったためである。簡単に言うとCD値が小さいとスムーズに速い動きができるというワケである。空気より1000倍も抵抗の大きい水中を猛スピードで泳げるイルカはCD値が0.06とかなり小さいことがわかる。また、止まったら死んでしまうマグロの形はまさに「流線形」であり、抵抗の大きい水中を素早く移動するうえで最も効率が良いボディデザインであることがわかるだろう。

 

空気抵抗には2種類ある

 

出典:パラシュート

 

空気抵抗と言われて真っ先に浮かぶのは「パラシュート」ではないだろうか?
パラシュートはスカイダイビングや大型旅客機の着陸時などに用いられ、その役割は「ブレーキ」である。スカイダイビングでは空から落下して、地面が近づいてくるとパラシュートを開き、スピードを殺しながら安全に着陸するためのツールである。よくテレビなどでパラシュートが開かなくて危機一髪という動画を目にするが、考えただけで恐ろしい。パラシュートが上手く機能しなければ真っ逆さまに落下していき、地面に叩きつけられて息を引き取ることになる。パラシュートは「空気抵抗」を有効活用している道具なのである。

 

空気抵抗は@圧力抗力とA摩擦抵抗の2種類

空気抵抗には2種類あり、先ほど話したパラシュートは@の圧力抗力による空気抵抗を活用したものである。もう一つは空気が車体表面を流れるときに、空気と車体の摩擦によって生じる抵抗が摩擦抵抗である。粘性抵抗と呼んだりもするが、簡単に言うと走行中の車体表面には空気との摩擦によって生じる摩擦抵抗が発生しているということである。

 

空気抵抗の90%以上は「圧力抗力」!

 

出典:三菱ふそう

 

CD値の大きい車は圧力抗力がほぼ全て

CD値の小さいマグロやイルカ、飛行機などは摩擦抵抗の割合が増えるが、車は比較的CD値が高いため空気抵抗のほとんどは「圧力抗力」によるものである。上の画像のような大型トラックは箱型をしており、CD値は0.7〜0.9くらいとかなり空気抵抗が大きい。これは直感的にわかると思うが、大きな車体はそれだけたくさんの空気をかき分けて走っているということである。流線形に比べて箱型はかき分けた空気が上手く元通りの位置まで戻ってくることはなかなか難しい。そのことが大きな空気抵抗を呼んでいるのである。

 

圧力抗力が発生するメカニズム

 

出典:ホンダ

 

圧力抗力の正体は「車体前後に生じた圧力の差」

上の画像を見て欲しい。赤が圧力が高いところで、青が圧力が低いところである。これを見ると車体の前方は赤くなっており圧力が高いことがわかる。それに対して車体後方は青くなっており圧力が低いことが明らかである。この圧力差が圧力抗力の正体である。

 

圧力差によって車体は負圧側へ引っ張られる

一般的に圧力が高いところを正圧、低いところを負圧と呼ぶ。このままだとイメージが湧かないので身近な例を挙げると、台風が来ると強風が吹き荒れる。これは台風がめちゃくちゃ「負圧」だからである。つまり圧力が高いところから、強烈な負圧である台風に向かって空気が移動するときに強風が吹くのである。自然界では圧力や温度、水位などが高いところから低いところに流れるのは当たり前のことである。簡単に言うと、車体の前側は圧力が高く、後ろ側は圧力が低いので車体は後ろに流れる、つまり車体は後ろに引っ張られるということであり、進行方向とは逆向きにブレーキが掛かるということである。これが圧力抗力が働く原理である。

 

圧力差をなくすこと=空気抵抗を減らすこと

 

空力を突き詰めていった結果、ワゴンRはこうなった

 

ワゴンRに施した空力チューンの数々は全て車体前後の圧力差をなくすため

ここまで読めばあなたもわかると思うが、車の空力を考えるうえで空気抵抗と圧力抗力は切っても切れない関係にある。つまり、空気抵抗を減らしたければ車体前後に発生する「圧力差」をなくすことがなにより近道なのである。実際に私のワゴンRに施した空力チューンの数々は全てが車体前後の圧力差をなくすための創意工夫なのである。空力に対して理解がない人が見るとただの頭のおかしい車だと思われるが(実際、血迷ってるだの、迷走中だの、何の意味があるのか、などと言ってくる人が後を絶たない)、あなたなら私が行ってきたことがわかるのではないだろうか?

 

私がやりたかったのは「空気抵抗を減らして燃費を上げる」、ただそれだけ

私はただ、車体前後の圧力差による圧力抗力を減らすことで空気抵抗を減らし、高速通勤での燃費を上げようとしただけである。「空気抵抗を減らして燃費を上げる」という極めて単純明快な遊びを全力で取り組んだだけであり、私の中では一切ブレていない。

 

私が少年のように無我夢中になってワゴンRを弄る姿を見て、嫁さんがすっかり呆れていたのは内緒である。(笑)


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