私がブレーキにこだわる理由

NAのシルビアという遅い車で速く走るには「走る・曲がる・止まる」のうち、止まるを強化する必要がありました。なぜ「走る」「曲がる」ではなく「止まる」なのか。その理由と私がブレーキにこだわる理由について説明していきたいと思います。

 

理由1 「走る」はほぼ車の性能

あなたはウサイン・ボルトのように100mを9秒58で走れますか?努力すれば可能になりますか?

 

どう頑張っても走れないですよね。あなたがいくら練習をしてもいくら良い食べ物を食べても100mを9秒58で走ることはできないと思います。なぜかって?

 

それは「持って生まれた天才的な才能と、圧倒的な努力が必要」だからです。

 

そうです、陸上の100m走などは持って生まれた天才的な才能が必ず必要で、さらに他を圧倒する努力があって初めて可能になるものですよね?

 

NAのシルビアに置き換えて考えてみましょう。
NAのシルビアは直列4気筒のDOHCで排気量2.000tで160馬力です。
ハッキリ言って直線を速く走る才能は全くないことがよくわかります。ライバルのターボ車は軽く300馬力ぐらい出ますし、NAのシルビアをお金を掛けてチューニングしたところで勝てません。

 

例えば、R35GT-Rならば免許取り立てのタコドライバーでもアクセルを踏めば誰でも簡単に300km/h出せますが、NAのシルビアではF1ドライバーがどんなに頑張っても300km/h出すことはできません。

 

つまり、持って生まれた天才的な才能がNAのシルビアにはないのです。
今以上に直線を速くする努力を私がいくらしたところで、こればっかりはどうにもなりません。

 

理由2 「曲がる」は腕の差より、車やタイヤの性能が大きい

それでは「曲がる」はどうか?
「走る」に比べれば可能性はあります。車重1.200kgとそこそこ軽く、癖のない素直なハンドリングのFR車がシルビアです。

 

足回りを車高調などで固めれば、なかなか良い戦闘力を発揮してくれそうな雰囲気はあります。
ですが、S2000やRX-7、RX-8などのコーナリングマシンと言われる車には到底及びません。

 

彼らは前後重量配分が50:50であったり、エンジンなどの重い部品が車体中央に寄せられ、なおかつ低重心化された理想的なパッケージで世に生み出されています。対するシルビアはエンジンが特に中央に寄せられているわけでもないため、前後重量配分は56:44ぐらいでFF並みにフロントヘビーなパッケージングです。

 

そのため、攻め込んでいくとどうしても重いフロントが遠心力に負けてアンダーステアが出てしまい、S2000やRX-7、RX-8のように鬼のようなスピードでコーナーを曲がることはできません。

 

つまり、勝てないということです。
それに曲がる性能はタイヤの性能が与える影響が大きく、当時大学生で通学だけで年間2万q以上走るような環境で、ハイグリップタイヤという選択肢はありえませんでした。タイヤは親に買ってもらっていたのでどう頑張ってもハイグリップタイヤの1段下のセカンドグレードあたりが限界で、基本的にはナンカンなどの安いアジアンタイヤを履いていました。

 

どうやっても「曲がる」では敵わないことは明白でした。

 

望みは「止まる」しかない

残されたのは「止まる」だけです。「走る」「止まる」は車の性能や大学生という金銭的な事情で勝負になりません。

 

では「止まる」はどうか?
「止まる」には無限の可能性があります。簡単に言うと、「走る」はアクセルペダルを踏むだけ、「曲がる」ハンドルを切るだけ、「止まる」はブレーキペダルを踏むだけです。

 

「走る」「曲がる」は街乗りの運転とあまり変わらない

普段の街乗りのときと比べて「走る」と「曲がる」はほとんど変わりません。「走る」に関しては街乗りのときよりも強く踏めばいいだけですし、「曲がる」に関しては街乗りと何も変わらず、ゆっくりと丁寧にハンドルを切るだけです。つまり街乗りの運転とさほど変わらないのです。変わるのは街乗りに比べてスピードレンジが高くなるだけで根本的に運転の仕方が変わるわけではありません。

 

普段の街乗りと大きく異なるのは「止まる」だけ

「走る」「曲がる」は普段の街乗りの運転とほとんど差がありませんが、「止まる」は全くの別物です。

 

あなたは日常の運転でどれだけ急ブレーキを掛けますか?
急ブレーキなんて街乗りでは、「急に人が飛び出してきた」とか、「脇道から車が無理やり割り込んできた」とかぐらいしかパッと浮かびません。多くの人にとって急ブレーキを掛けるときは「パニック状態」なんです。

 

「パニック状態」でコントロールできる人間はほとんどいないという話

多くの人は「急に人が飛び出してきた」ときに思いっきりブレーキペダルを踏むことしかできません。おそらくABSが効きっぱなしになる人がほとんどです。もしABSがなかったらどうなりますか?

 

フロントタイヤがロックして、そのまま止まれずに人を跳ねてしまうでしょう。ロック寸前になったら冷静にブレーキを弱めるなんて操作をできる人はいないでしょう。

 

つまり、「止まる」ということに関しては多くの人はド素人そのものなんです。ABSがなかったらまともに止まれる人なんて滅多にいません。ブレーキを自由自在にコントロールできれば、車の性能差なんて簡単にひっくり返りますからね。それぐらい「止まる」を磨くことは価値があることなんです。

 

ブレーキにこだわる

遅い車に乗る人間が、速い車に乗る人間に勝つには「ブレーキ」を磨く以外にありません。
遅い車に乗るプロドライバーが、速い車に乗るアマチュアドライバーに勝てるのは、ブレーキングのドライビングテクニックがアマチュアドライバーに比べて圧倒的に高いからです。

 

遅いNAのシルビアを一級品の戦闘力にするには、シルビアのブレーキ能力と自分のブレーキングテクニックを磨き上げるしかありません。

 

シルビアのブレーキは貧弱すぎる

私はブレーキにこだわるあまり、ブレーキメーカーで開発業務をしていますが、ハッキリ言ってシルビアのブレーキはあまりにも「貧弱」です。どれぐらい貧弱かというと、1.000〜1.500tクラスのコンパクトカーと同程度のブレーキが付いています。前後片押しキャリパーで、フロント15インチ、リア14インチのローターが付いています。

 

スポーツカーというにはあまりにもブレーキ容量が少なく、フィーリングも良くありません。事実、下りでハードに走るとパッドが炭になってしまい、一度死にかけた経験があります。

 

対向キャリパー化とビックローター化に踏み切る

シルビアのブレーキは、ブレーキ容量が少なく、フィーリングも良くないという欠点があります。
ブレーキングで勝つにはゴミブレーキシステムをなんとかしなくてはなりません。

 

そこで私が行ったのは「対向キャリパー化とビックローター化」です。
日産は流用天国なので、スカイラインGT-Rなどの兄貴分のパーツを流用することが可能です。フロントはR33スカイライン・タイプMのフロントブレーキを丸々移植しました。R33タイプMはR32GT-Rとフロントブレーキが共通なのに安価でヤフオクなどに出回っています。

 

R33タイプMのフロントブレーキを流用することで、フロントは対向4ポッドキャリパーにアップグレードし、ローターも15インチから16インチにアップしました。リアブレーキに関してはフロントとバランスを取るため社外のビックローターキットを入れ、純正キャリパーのまま16インチに強化しました。

 

見違えるほど良いブレーキになった

1.000〜1.500tクラスのコンパクトカーと同程度のブレーキから、R32GT-Rと同程度のブレーキシステムに強化したので、かなり強力なブレーキシステムになりました。

 

NAで軽くて遅いシルビアには若干オーバーキャパシティにも感じるかもしれませんが、純正のブレーキシステムは「街乗りで不具合がないような設計」になっているため、ガチ走りには力不足です。オーバーキャパシティに感じる程度に余裕がある方がブレーキ性能が安定しますし、フェードなどを気にしなくていい分かなり攻めたブレーキング勝負ができます。

 

事実、ブレーキを変えてから、かなり攻めたブレーキを繰り返しましたが、シルビアを降りるまで一度もブレーキの不具合は起きませんでした。備えあれば憂いなしです。ブレーキは重要保安部品と呼ばれるぐらい安全に影響するので、ブレーキにはこだわった方が身のためです。

 

ブレーキ強化完了!あとはドラテクを磨くだけ

ブレーキを強化したので、あとは己のドラテクを磨くだけです。

 

私がどのようにして使えるブレーキを身に付けたのかを以下の記事にまとめました。ぜひ参考にしてみてください。きっと役に立つ情報が得られると思いますよ。
私がブレーキングテクニックを身に付けた方法


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