走りに目覚める

シルビアをATからMTに載せ替えてからというもの、私は人が変わったように運転が好きになっていた。というより、元々好きだったのかもしれない。とにかくATからMTになっただけで、ダイレクト感が全く別物になった。S15のATはDCTのようなダイレクト感に優れたATではなく、トルコン式のごくありふれた4速ATだった。ATのときはアクセルを踏んでから加速するまで結構なタイムラグがあったし、AT特有のキックダウンによる意図しない急加速など、操る愉しさとは無縁の状態であった。

 

革命を起こしたMT化

MTは大きく違った。アクセルを踏めばすぐに加速した。今までのレスポンスの悪さが嘘みたいに右足の動きにダイレクトにシルビアは応えてくれるようになった。「操る愉しさってこういうものなんだろうな」とそのとき思った。自分の意志に忠実に動いてくれる気持ちよさ、MTには”それ”があった。

 

また、ATのときは何も意識しなくてもアクセルを踏めば前に進んでくれたが、MTの場合はそうはいかない。まずはクラッチを左足で踏み、続いてギヤを1速に入れる。その後アクセルを軽く吹かしながら、ゆっくりクラッチを繋ぐ。クラッチミートしてから徐々に回転数を合わせていく。

 

この一連の操作がMT乗りの儀式である。

 

もうただの移動手段ではない

ATのときはぱっと見スポーツカーだが、単なる移動手段に過ぎなかった。それがMTになった途端に突然意思を持ったようにイキイキと走るのだから何とも面白い。MTは自由なのだ。エンジンの回転数も、ギヤチェンジのタイミングもドライバーの自由である。

 

今までなかった感覚であった。車との対話がそこにはあって、自分の思い通りに車を動かすには、かならず車とのコミュニケーションが必要なのである。現代では人々のコミュニケーション能力の低下やコミュニケーション不足が大きな問題となっている。MT車からAT車への急速な変化が無関係とも私は思えない。AT車には意思がないのだ。ドライバーが車とコミュニケーションを取れなくても、車は文句も言わずに普通に走ってくれる。

 

これが問題なのである。相手の状況を考える必要がないためにいくらでも傍若無人な態度をとることができてしまう。MTは相手を思いやる心を教えてくれるのではないだろうか?

 

MT車は単なる移動手段の道具ではなく、相棒なのである。

 

思いのままに操りたい

ある程度普通に走れるようになると、次は思いのままに操りたくなるのがMT乗りの常である。ATのように誰が乗っても同じように走るのと違い、MT車はドライバーの操作に忠実である。そのため、ドライバーがタコドライバーだと車は終始ギクシャクした動きをするし、上手いドライバーが運転するととてもスムーズに車は走る。

 

やはりMTに乗る以上、自分の愛車はスムーズに走らせたいと思う。そこで免許取り立ての初心者ドライバーと上手いドライバーで、何が違うのか考えた。すると以下のポイントが浮かんできた。

シフトアップが速い

シフトアップとはギヤを1速から2速に上げるなど、ギヤを上に上げる操作のことを言う。シフトアップは車を加速させていくときに行う操作である。このシフトアップが初心者と上手いドライバーでは大きく異なる。

初心者のシフトアップ

@アクセルを離す
Aクラッチを切る
Bギヤを1段上に入れる
Cクラッチを繋ぐ
Dアクセルを踏む
初心者はこの5つの動作を一つ一つ切り離して行う。そのため、時間が掛かるし、車が前のめりになったり後ろに傾いたりとギクシャクした動きになってしまう。時にCからDは同時に行うべきだが初心者は別々にやってしまう。私が教習所の最終試験のときに同乗した男性の運転が正にこれだった。Cでクラッチだけを急に繋ぐので車は急激なエンジンブレーキが掛かり、荷重が前に移動する。その後すぐにアクセルをグイっと踏むため、今度は急加速し前に移動していた荷重は後ろに一気に移動する。このとき私はこう思った。
「この人、クソ下手だな」

上手いドライバーのシフトアップ

上手いドライバーのシフトアップは初心者のそれと違って無駄がない。初心者は@〜Dを切り離して別々に行うと述べたが、上手いドライバーは@〜Dをほぼ同時に行うのである。特に@〜Bは完全に同時進行である。@〜Bを同時に行うと、右足、左足、左手が同時に動く。そしてギヤを入れた瞬間にクラッチを繋ぎアクセルを踏む。このように無駄が一切ないシフトアップは洗練されていて美しい。また車の動きも瞬時にシフトアップするため、全くギクシャクした動きにならない。このシフトアップを目指す必要がある。

 

発進時にギクシャクしない

初心者は不慣れのため、ギクシャクした発進になってしまうことが多い。これもアクセルの吹かす感覚と、半クラッチをどこまで続けるかに関わってくる。初心者は大抵の場合、半クラッチの時間が比較的短く、エンジンとミッションの回転数のすり合わせができていないうちに一気にクラッチを繋いでしまう。回転数が合ってないままつなげるため、エンジンの回転数に対してミッションの回転数が足りず、前に押し出されるような感じで発進してしまう。これはエンジンやミッション、クラッチなどに負担が掛かるためなるべく避けたいミスである。

 

シフトチェンジによるショックが小さい

これは上の「発進時にギクシャクしない」とほぼ一緒だが、ギヤを1速から2速、2速から3速と上げていくときの変速ショックが少ないのである。発進時に比べると半クラッチを使う必要はほとんどないが、ほんの少しだけ半クラッチを意識すると変速ショックを和らげることができる。慣れてくるとATより滑らかにギヤチェンジをすることができるので、それが面白かった。

 

考えながら対話しながら乗るのが愉しい

MTの醍醐味はやはり車との対話だと思う。どうすれば上手く運転することができるのかと考えながら、車と対話しながら乗るのが愉しいのである。上手く出来ないものを試行錯誤して出来るようになった瞬間、達成感と運転する愉しさを味わえるのではないだろうか?
 
MTには”それ”がある。私はそのことをシルビアから学んだ。


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