「カナード」がフロントのダウンフォース獲得に効果的な理由

 

出典:スイフトスポーツ

 

カナードとは、上の画像のフロントバンパー横に付いているブーメランのようなパーツである。レースの世界でもよく使われる空力デバイスで、チューニングカーでもサーキット走行するようなマシンには大抵付いているお馴染みのパーツである。上の画像では黒いカナードが2つ装着されている。

 

純正でもカナード形状は採用されている

 

出典:S2000 タイプS

 

S2000 タイプSに採用

私を含めてS2000乗りには超が付くほど有名なのが「タイプS」の純正リップである。純正バンパーに装着するタイプのリップスポイラーで形状はまさにカナードである。S2000のサーキット走行車両ではかなりの装着率を誇っているあたり、効果は折り紙つきということであろう。タイプSリップを装着するとフロントの設置感が段違いに良くなると言われていることから、タイプSリップがフロントのダウンフォース獲得に効果的であることは間違いない。なぜ「カナード」はフロントのダウンフォース獲得に効果的なのか、これから述べていきたい。

 

カナードがダウンフォースを稼げるワケ

出典:スプーンと水

 

「カナード」はコアンダ効果を賢く応用している

コアンダ効果を確かめるのによく使われる例にスプーンと水道水があげられる。上の画像のように、水道水を流した状態でスプーンの背を近づけていく。そしてスプーンと水道水が交わると、水道水は真っ直ぐ落下していた挙動からスプーンの方向に曲がって流れていく。そしてスプーンは赤い矢印の方向へ力を受ける。つまり、跳ね上がった形状をしたスプーンに沿って流体である水道水の水が流れる(コアンダ効果)。スプーンによって流れの向きを変えさせられた水道水からの反作用でスプーンは水道水が流れていた方向に吸い寄せられるのである。

 

「カナード」も同じ原理

カナードは大抵斜め上向きの角度になるようにフロントバンパー横に取り付けられる。その結果カナード付近を流れる空気はコアンダ効果によってカナードに沿って上向き流れを変える。すると反作用によってカナードは下向きの力(ダウンフォース)を得るというワケである。

 

「カナード」は圧力差も利用してダウンフォースを稼ぐ

 

出典:ムーンクラフト

 

ベルヌーイの定理の応用

上の画像はカナード周辺の圧力差を見ており、赤くなるほど圧力が高い正圧の状態で、青くなるほど圧力が低い負圧の状態である。この画像を見ると、バンパー正面やフロントタイヤ前が特に赤くなっていることがわかる。つまり圧力が高く流速の遅い「よどみ点」であるといえる。カナード上面も圧力が高めであることが画像より明らかである。

 

それに対してカナード下面とフロントタイヤ側面は水色を示しており、圧力が低いことが見て取れる。つまり圧力が低い負圧の領域で流速も速いことが予想される。これよりカナード上面と下面との間の圧力差によってフロントは下向きの力(ダウンフォース)を得ることができるという仕組みである。

 

カナードを付けてもほとんど空気抵抗にならない

 

出典:トップフューエル

 

そもそもフロントバンパー付近は圧力が高くて流速が遅いから

基本的にGTウイング等を装着すると空気抵抗が増えてスピードが落ちる。それはGTウイング等を装着することで今までなかったところに空気の流れを遅くし、圧力を高める障害物ができたからである。GTウイングの上面などがそうである。それに対してカナードはフロントバンパーに装着される。フロントバンパーは元々空気がぶち当たるところであり、空気の流れが一度0km/hになる「よどみ点」が存在する。そのため、新たにカナードを装着したとしても流速を落とすことがないため、空気抵抗になりづらい。

 

事実、ムーンクラフトの風洞実験によるとダウンフォースは8%も増加した一方で空気抵抗はわずか0.3%の増加に留まったというデータが公表されている。これよりカナードによる空気抵抗の増加は無視できるほど少ないといえるのではないだろうか?注目すべきはほぼドラッグを増やさずにダウンフォースを8%も向上させたということである。

 

ドラッグを増やすことなくダウンフォースを得られる「カナード」が、サーキットでもてはやされるのは至極当然のことであろう。私は如何にもチューニングカーな社外品のカナードを装着することにためらいがあるので、純正のタイプSリップが欲しい今日この頃である。(笑)


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