ウイングが失速する?GTウイングがデチューンになる可能性

 

出典:VOLTEX製GTウイング

 

あなたはGTウイングを装着しているだろうか?
GTウイングとは上の画像で言うとトランクに付いている黒い羽根のことを指している。GTウイングは飛行機の翼をひっくり返したような形をしていると説明されることが多いが、それは半分正解で半分誤りである。

 

今回はGTウイングの効果を左右する「角度」について考えたい。

 

飛行機はなぜ飛べるのか?

 

出典:翼断面

 

空力の考え方は飛行機でも車でも変わらない

上の画像は飛行機の翼断面を表したものである。私は飛行機については完全な素人であるため、翼断面の下に書いてある名前が飛行機の名称なのか、翼断面形状の名称を表しているのかは全くわからない。だが空力の考え方は車でも飛行機でも変わりはなく、シンプルなルールである。車と飛行機ではそのルールの応用の仕方が異なるだけであり、根本は同じである。

 

翼断面形状の共通点

翼断面形状を見て、あなたは何か共通点を見つけることができるだろうか?
翼断面形状にはある法則がある。それは「上側が丸っこくて下側が平たい」ということである。この形状に大きな意味があるのである。

 

揚力>飛行機の重さだから飛行機は空を飛べるだけの話

飛行機がなぜ飛べるか?
それはかなり単純なことで、重力よりも大きな力が上向きに掛かっているからである。ものを地面から持ち上げることと全く同じであり、あなたがものを持ち上げるには、ものの重さより大きな力で持ち上げればよい。飛行機も全く同じであり、空力によって上に持ち上げる力(揚力)が飛行機の重さより大きくなったら空を飛べるというシンプルなメカニズムである。

 

揚力が発生するメカニズム

 

出典:翼断面の模型

 

流線曲率の定理が揚力の根源

流線曲率の定理とは、流体が凸な局面に沿って曲がろうとする「コアンダ効果」と、曲面の内側と外側の流速差によって生じる圧力差「ベルヌーイの定理」によるものである。コアンダ効果によって空気の流れは下向きに変化し、その反作用によって翼は上向きの力を受ける。これが揚力発生のメカニズムである。更に流れの速い上側はベルヌーイの定理より圧力が下がり、反対に流れの遅い下側は圧力が上がる。つまり翼上側が負圧になり、翼下側が正圧になる。その結果、翼の上下の圧力差によって翼は揚力を受けるのである。

 

この流線曲率の定理によって、飛行機は空を飛ぶことができるのである。

 

GTウイングは揚力を下向きに発生させるだけ!

 

出典:S2000とVOLTEX製GTウイング

 

GTウイングは揚力を下向きに発生するように応用したもの

ここまで読んで頂いた方ならもうお分かりだと思うが、GTウイングは飛行機の揚力発生メカニズムを単純に下向きに発生させるように応用しただけのことである。飛行機を宙に浮かせるか、車を地面に押さえつけるかというだけのことである。

 

つまり流線曲率の定理を応用して、GTウイングに当たる空気をコアンダ効果によって上向きに変え、翼断面を上側より下側を凸な局面にすることでベルヌーイの定理より圧力差が生じ、下向きの力(ダウンフォース)が発生するのである。とっても簡単でしょ?

 

GTウイングの角度を付けすぎると、空気が剥離する

 

出典:マツダ RX-7 FC3S

 

角度を付ければ良いってもんじゃない

たまに上の画像のようにGTウイングを効かせようとして、やたらと「角度」をつけている車両を目にする。これまでの話だと「空気を上向きに変えればダウンフォースを得ることができるんだから良いんじゃないの?」と思って、GTウイングをいたずらに立てる人が後を絶たない。だがこれはGTウイングの効果を台無しにする「デチューン」の典型例である。

 

なぜ角度を付けすぎるとダメなのか

 

出典:角度と剥離の関係

 

角度を付けすぎると「剥離」するから

上の画像はGTウイングの角度を付けすぎるとどうなるかを示している。これは飛行機の翼をモデルにしているため上下を逆にして考えていただきたい。確かにウイングを立てて角度をつけることで空気は向きを変えていることがわかる。その反面、ウイングの裏側では急激な角度の変化に追従できなかった空気が大きく剥離して渦を巻いてしまっている。これを俗に「ウイングが失速する」という。

 

ダウンフォースは大幅にマイナスに

本来はコアンダ効果により、空気はある程度までなら回り込むことができる。しかし、あまりにもウイングの角度を付けすぎてしまうと空気が剥離してしまうのである。こうなってしまうとコアンダ効果による空気の向きの変化によるダウンフォースは半減し、ウイング上下の流速差によって生じる圧力差を利用したベルヌーイの定理によるダウンフォースは期待できない。GTウイングの角度を付けすぎるとダウンフォースが増大するどころか、大幅にマイナスになってしまうことがわかって頂けると思う。

 

泣きっ面に蜂なのが、大きな渦を巻いて剥離した空気が車体前後の圧力差を助長することで、大きな空気抵抗になってしまうのである。これでは何のために高いお金を払ってGTウイングを買ったのかわからなくなってしまう。これだったら一見効かなそうに見える純正ウイングの方が遥かに「エアロデバイス」としての役割を果たす。そうならないためにも、GTウイングをむやみやたらに立てて角度を付けるのはやめるべきである。正しい空力の知識を身に付ければこのような悲しい「デチューン」を防ぐことができる。


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