なぜスピードが上がれば上がるほど「ダウンフォース」は発生するのか?

 

出典:航空機

 

一般的に空力はスピードが上がれば上がるほど強力に働いてくるものである。その好例と言えるのは「航空機」であろう。例えば飛行機で海外旅行などに行くとき、飛行機は空港から離陸するべくスピードを一気に加速させるため、あなたもびっくりした経験があるのではないだろうか?

 

これは飛行機がスピードを上げないと飛べないという何よりの証拠である。飛行機を浮かせる力と車を地面に押し付ける力(ダウンフォース)は力の向きは違えど、基本的な考え方は一緒である。そこで今回は、なぜスピードが上がれば上がるほど「ダウンフォース」は発生するのか?について考えてみたいと思う。

 

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ダウンフォースは2種類ある

 

出典:RCF GT3

 

圧力差によるダウンフォースと空気の流れる向きの変化によるダウンフォースがある

最初に飛行機を浮かせる力と車に働くダウンフォースは、基本的に同じ考え方であるとお話した。飛行機を浮かせる力を発揮させているのはご存知の通り、あの「翼」である。要は飛行機に付いている2つの大きな翼があの重い飛行機を浮かび上がらせているのである。

 

 

出典:CAE

 

わかりやすく言うと、飛行機の「翼」は車で言うところの「GTウイング」である。GTウイングの断面は翼断面形状を上下ひっくり返したような形状をしている。ちょうど上の画像のようなイメージで問題ない。この画像はGTウイング周辺の空気の流れる方向と圧力差を見ているものと考えてよい。
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これを見ると、ウイングの上下で赤と青に分かれていることがよくわかる。これはウイングの上下で圧力差が生じていることを示している。圧力差が大きいところで50%も変化している。これはつまり、GTウイングによって圧力差が作り出され、強烈なダウンフォースを発生させることを示している。

 

また、空気の流れる形について着目してみると、ウイングの上部を流れる空気は堰き止められながらも上向きに変化していることがわかる。同様にウイングの下部ではきれいに下から上向きに流れを変えている。これは「コアンダ効果」によるもので、流体は物体に沿って流れを変えるという特性を上手く利用したものである。なぜ「ガーニーフラップ」を付けるとダウンフォースを稼げるのか

 

スピードが上がるほど流速は上がり、ウイングが受ける力も大きくなる

 

出典:F1

 

ウイングが受ける力=ダウンフォースの大きさ

あなたも経験的にわかると思うが、スピードが上がるほど=流速が上がるほど見えない空気の存在を感じるのではないだろうか?

 

 

出典:競輪

 

例えば自転車で走るとき、ママチャリなどの普通の自転車などでは乗っている人は直立な姿勢で乗るように設計されているが、ロードバイクや競輪選手が乗るような自転車は前傾姿勢で乗るように設計されている。これはママチャリと競輪選手が乗るような競技用自転車ではスピードレンジが大きく異なるからである。

 

ママチャリは良いとこ40km/hも出せれば上等で、普通に街中を走るときは20km/hぐらいである。それがトップクラス競輪選手になると70km/hオーバーで走ると言われている。つまり、前傾姿勢を取らなければならないほど空力の影響が大きくなるということであり、スピードレンジが上がるほど空力が効いてくるということである。
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富士スピードウェイの長い直線のとき最も車高が下がる「紫電」

 

出典:紫電

 

1コーナーのフルブレーキ直前で車高は地面スレスレに

レーシングカーの車高が最も低くなる瞬間は「最高速」が出ている瞬間である。ムーンクラフトの渡邊さんによると紫電は停止状態での車高はレギュレーションによって50mmに設定しているが、富士スピードウェイの長い直線の後の第一コーナー直前の車高は限りなく地面スレスレになっているという。

 

ブッシュやばねの硬さ、ダウンフォースの発生量などを計算によって求め、調整することで可能になっている。そのため、レーシングカーは300km/hを超えるような超高速域からのフルブレーキングでも姿勢を乱すことなく安定した走りができるのである。

 

市販車ではそうはいかない

これが普通の市販車になってくると全く逆の傾向を示してくるから面白い。通常、普通の市販車はレーシングカーのようなエアロダイナミクスはなく、スピードを出せば出すほど不安定になってくるものである。あなたも経験があるかと思うが、高速道路の追い抜き車線などで猛スピードで走っている車を見たことはないだろうか?

 

個人的によく目にするのは商業用のバンやミニバンなどの空力的に「イマイチ」な車が多い。それらの車は箱型のため空気が剥離しやすく、空気抵抗はかなり大きい。また、車高も高いためベルヌーイの定理によって地面との間に生じるグランドエフェクトも期待できない。
空気抵抗の正体とは? 

 

ダウンフォースを発生させるようなエアロデバイスもないため、空気を味方にすることなく不安定な状態でエンジンパワーで無理やり頑張っている状態なのである。このような状態で走っていれば高速道路でフラつくのは至極当然のことというのが理解できるはずである。

 

スピードレンジが上がれば上がるほど、空力はプラスにもマイナスにも振れ幅が大きくなる。従って、空力が優れていない市販車ではスピードレンジが上がるほど車体をリフトさせる不安定な方向になり、フラついてしまうのである。

 

市販車とは逆で、レーシングカーはブレーキングで車高が浮き上がる

 

出典:NSX

 

ブレーキングでノーズダイブする「市販車」と、逆に車高が上がる「レーシングカー」

更に面白いのがブレーキングのときの挙動の違いである。普通にあなたや私の乗っている市販車はブレーキングをするとゆっくりと車体が前に沈んでいく「ノーズダイブ」を引き起こす。また、車体をリフトさせていた効果もスピードが落ちることで小さくなり、車体は沈み込んでいく。

 

それに対してレーシングカーはブレーキングによって車速が落ちると車高が上がっていくのである。これは車速が落ちることによって今までダウンフォースによって地面に押し付けられていた効果が小さくなるためである。

 

その結果、ブレーキング後のコーナリングの最中はダウンフォースが少ない状態で走らなければならない。つまり高速コーナーとヘアピンのような低速コーナーではダウンフォースの量が全く違うため、スピードレンジの異なるコーナーではマシンの挙動も変わってくるのである。
ダウンフォースが発生する原理や仕組みは市販車とF1で変わらない理由 

 

走るステージによってダウンフォースを使い分けろ!

 

出典:サーキット

 

富士スピードウェイと筑波サーキットでは当然異なるセッティングが必要

高速コーナー主体のスピードレンジが高いサーキットではダウンフォースを抑えたチューニングをしなければならないし、逆にヘアピンなどの低速コーナー主体のスピードレンジが低いサーキットではウイングの効果を高めてダウンフォースを積極的に稼ぐようなチューニングを施さなければ良い結果を残すことは難しい。
なぜ「ガーニーフラップ」を付けるとダウンフォースを稼げるのか

 

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