定番の「ローテンプサーモスタット」は用途によってはマイナスになる

 

出典:無限ローテンプサーモスタット

 

冷却チューンの第一歩とされる「ローテンプサーモスタット」

S2000冷却系強化計画!まずはOBDモニターから「水温」をチェックせよ!にて自分のS2000の水温がどの程度なのかを数字で知ることができた。気温15度程度で街乗り90〜95℃、峠のガチ走りで92℃くらいで推移し、S2000がフルパワーを発揮すると言われている「80〜90℃」よりも常にオーバーしてしまっている。

 

真夏の猛暑(35℃以上)になってしまったら、おそらく街乗りで水温100℃に到達してしまうことは容易に想像できる。そこで、S2000を気持ちよく走らせるために、冷却チューンを行い、春夏秋冬をフルパワーで走らせたいというのが私の願いである。

 

そこで今回は、冷却チューンの第一歩としてスポーツカー乗りの大多数が最初に手を出す「ローテンプサーモスタット」について考えてみることとする。

 

S2000をもっと愉しむチューニング

 

ローテンプサーモスタットの特徴とは?

 

出典:ラジエター

 

サーモスタットとは?

サーモスタットの職業は「水温の管理人」である。エンジンを掛けてから暖気している間は、サーモスタットが閉じることで冷却水をエンジンだけで循環させる。ある一定の温度まで水温が上がると、サーモスタットが開き、今度はエンジンを冷やすためにラジエターにも冷却水を循環させる。そしてある温度まで下がると、サーモスタットが閉じてエンジンだけで循環させる。

 

サーモスタットがやっている仕事は、水温によって開けたり閉じたりすることでエンジンの温度をコントロールし、エンジンを「適温」で動かすことである。

 

ローテンプサーモスタット=純正よりも低温で作動するサーモスタット

冷却系のチューニングで有名な「ローテンプサーモスタット」は、簡単に言うと、純正サーモスタットよりも低温で開けたり閉じたりするサーモスタットである。

 

例えば、S2000の純正サーモスタットは水温が78℃でサーモスタットが開き始め、水温が90℃になると全開で冷却水をラジエターに流し、冷やすことができる。それに対し、ローテンプサーモスタットは水温が68℃でサーモスタットが開き始め、水温が83℃になると全開で作動するものがほとんどである。

 

つまり、ローテンプサーモスタットは純正サーモスタットよりもいち早くラジエターで冷やしはじめ、水温を低く抑えようという設計である。およそ10℃低い水温から作動するため、実際装着している人は純正サーモスタットよりも10℃くらい水温が低いようである。

 

S2000に搭載されたエンジンは「アルミブロック」で作られており、「水温」がとても重要になってくるようである。ローテンプサーモスタットにすると、どんな影響があるのか見ていこう。

 

ローテンプサーモスタットの「デメリット」=オーバークール

 

出典:F20C

 

エンジンの「適温」から外れる→エンジンブローのリスク

エンジンの水温は、人でいうところの体温である。人の体温は36℃台が平熱で、37℃は微熱、40℃は即病院レベルの高熱であることに異論はないだろう。逆に36℃よりも低い34℃まで体温が下がると、これまた低体温症などで、病院送りである。

 

つまり、人の体温にはちょうどいい温度「適温」が存在するのである。これはエンジンでも全く同じである。エンジンはピストンやシリンダーなどが「熱膨張」することを見越して設計されている。そのため、設計した温度に達しなければ、ピストンなどが設計通りに熱膨張せず、エンジン自体が「スカスカした状態」で動くわけである。

 

これは暖気する前に走ることと一緒である。暖気中の状態ではVTECに入れることがECUで制御されてできないのと同じように、適温から外れた状態ではピストンなどが暴れることでエンジン内の異常摩耗を引き起こしたり、ブローバイガスがエンジンオイルに混ざり込むことによるオイルの劣化が起きたり、燃料を多く噴射することによる燃費悪化など、様々なデメリットがある。最悪は「エンジンブロー」が待っている。

 

冬場は「オーバークール」に悩まされる

実は「オーバーヒート」よりも「オーバークール」の方が色々と危険である。ローテンプサーモスタットにすることで、ほぼ100%冬場は適温から外れ、オーバークールになる。オーバーヒートもオーバークールも行き着く先は「エンジンブロー」だが、オーバークールは厄介である。

 

オーバーヒートの場合、基本的にスローダウンしてクーリングタイムを取れば防ぐことができる。さらにヒーターを全開にしたり、エアコンをONにすることでオーバーヒート状態を解消することは可能である。

 

しかし、オーバークールは救いようがない。オーバークールは気温の低い真冬に起こりやすく、暖気によって水温を上げても走行風によってすぐに水温は下がってしまうし、寒いからとヒーターを付ければ一気に水温は下がってしまう。また、ちょっとした下り坂でアクセルオフをすれば燃料カットで水温が下がる一方である。

 

実際、ローテンプサーモスタット+サーモスイッチ+社外の大容量ラジエターに交換している場合、70℃を下回ってしまうことも珍しくはない。これではただのデチューン以外の何者でもない。
 
エンジンの「適温」は純正サーモスタットの作動温度が教えてくれる。S2000の場合、水温が78℃でサーモスタットが開き始め、水温が90℃になると全開になる。つまり、純正サーモスタットの作動温度である78℃〜90℃と、S2000がフルパワーを発揮する水温80〜90℃はほぼ一緒である。

 

「エンジンには適温があり、その範囲内に水温をコントロールすることが本当の意味でのチューニングである。」

 

意外な真実!全開した後は純正サーモスタットと同じ性能

 

愛車S2000に取り付けたOBDモニター「PIVOTのWTM-R」

 

結局のところ、水温が冷えるかどうかはラジエターの性能次第

大前提として、エンジンを冷やしているのは「ラジエター」である。ローテンプサーモスタットはラジエターをより効果的に働かせるためのツールでしかないということである。ローテンプサーモスタット自体には冷却能はないのである。

 

つまり、ローテンプサーモスタットが全開になる83℃より水温が上がると、そこから先は純正サーモスタットと全く同じである。つまりサーモスタットが全開になってからはラジエターの性能で水温は上がったり、下がったりする。

 

エンジンの発生させる熱量に対してラジエターが放熱する熱量が大きければ、サーモスタットが全開になる温度よりも水温が上がることはできない(渋滞などで停止している場合を除く)。逆に、エンジンの発生させる熱量に対してラジエターが放熱する熱量が小さければ、サーモスタットが全開になっても水温は上がり続けてしまうだろう。

 

ローテンプサーモスタットは美味しい水温を引き延ばすための時間稼ぎツール

ローテンプサーモスタットにすれば、ラジエターの性能が足りていなくてもフルパワーを発揮できる美味しい水温に留まっている時間を長引かせることができる。もちろん、全開になってしまえばラジエターの性能次第になり、ローテンプサーモスタットの有無は関係なくなる。

 

小手先の冷却チューンだが、真冬ではローテンプサーモスイッチと併せて使用すれば、純正のラジエターの性能でも十分足りるようだ。しかし、純正サーモスタットで常に90℃以上の水温である私のS2000の場合、吸排気+コンピューターチューンによる発熱量の増加に対して、純正ラジエターの性能が足りていないということである。

 

気温15℃でヒーター全開状態での峠のガチ走り92℃安定が、純正ラジエターの性能が足りていない何よりの証拠である。もちろん、新品状態ではなく16年選手であるため、純正ラジエターも目詰まり等で性能低下していることは十分考えられる。

 

私は「ミドル」テンプなサーモスタットが欲しい!

 

愛車S2000

 

純正サーモスタットの全開温度を90℃から83℃に変更したものが欲しい

純正ラジエターの冷却性能が足りていないことは明らかだが、私はローテンプサーモスタットに交換しようとは思わない。これだけ多くのチューニングカーが当たり前のように、疑うことなくローテンプサーモスタットに交換しているが、私は純正サーモスタットのままでいようと思う。

 

もしも純正サーモスタットの作動開始温度(78℃)のまま、全開温度を90℃から83℃くらいに下げているものが販売されていたら、迷わず交換しているだろう。私はそれをミドルテンプサーモスタットと呼ぶが、S2000には存在しない。

 

作動開始温度が78℃のままならば、ローテンプサーモスタットのデメリット(真冬のオーバークール)を気にしなくてもいいし、全開温度も83℃になれば、ローテンプサーモスタットのメリット(美味しい温度を堪能できる)の良いとこ取りだと思うのだが…。

 

純正サーモスタットとローテンプサーモスタットの良いとこ取りをした「ミドルテンプサーモスタット」の販売を心から願わずにはいられない。

 

S2000をもっと愉しむチューニング

 

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