なぜ冬になると燃費が悪くなるのか
出典:マフラー
「冬になると燃費が悪くなる」
このことはある意味「常識」として世間一般に受け入れられている事実である。
だがなぜ冬になると燃費が悪くなるのかについては様々な要因があり、どれも確からしいことばかりである。
そこで今回は、空力の観点から「なぜ冬になると燃費が悪くなるのか」について考えることとする。
原因として良く挙げられる理由
エンジンが暖まるのに時間が掛かるから
単純に冬になると気温が下がるため、エンジンが暖まるまで時間が掛かる。
それまでの間、いち早くエンジンを暖めようとCPUがアイドリングの回転数を高めに制御するため、燃料をより多く消費する。
また、アクセルOFFのときもエンジンが暖まる前だとアクセルONされているような感覚をMTのワゴンRでも感じた。
つまり、エンジンが暖まるまでの間は積極的に燃料を燃やすようコントロールしているのであろう。
燃費にとってはマイナスである時間が冬場は長引くため、燃費が悪いと考えることができる。
スタッドレスタイヤを履いているから
出典:夏タイヤとスタッドレスタイヤ
これは一目瞭然だが、スタッドレスタイヤは夏タイヤに比べてタイヤが凸凹している。
雪を捉えるための工夫が満載のスタッドレスタイヤの転がり抵抗は素人目で見ても良くない。
雪に備えてスタッドレスタイヤに交換するだけで燃費が悪くなる要因になる。
夏タイヤからスタッドレスに履き替えると、どれくらい燃費が下がるのか
日が暮れるのが早く、ライト必須の環境だから
出典:夜の交通
これは仕方のないことだが、冬は日が短い。
つまり帰宅時間には真っ暗になっていることが多い。
そのため帰宅時はライトは付けなければまともに走ることができない。
ライトを付けることは電気を消費することと同じであるため、バッテリーの消耗が冬場は早くなる。
充電制御車の見分け方とその仕組みを利用した燃費向上テクニックとは?
消費した電力を発電しようとオルタネーター(発電機)をエンジンの動力で動かすため、結果的にエンジンパワーが発電に食われてしまい、燃費は悪くなってしまう。
エンジンオイルなどの粘度が高く、抵抗になるから
出典:エンジンオイル
これもエンジンの暖気に時間が掛かるのと似たような理由だが、エンジンオイルなどの油脂類も程よい温度というものがある。
冬場は程よい温度よりも遥かに低いため、オイルなどの油脂類は粘度が高い状態が長引く。
単純に粘度が高いと抵抗になるため、エンジンパワーが食われてしまい、燃費が悪くなってしまうと考えられる。
エンジンオイルの粘度を変えると燃費が上がる?5w30→0w20で効果を確認してみた!
冬は空気密度が高くなる
空気抵抗=CD値×前方投影面積×(速度×速度)×空気密度×1/2
これは空気抵抗を式で表したものである。
詳しくは空気抵抗を減らすためにやるべきことを参照して欲しい。
この空気抵抗の式には「空気密度」という項目が含まれている。
この空気密度が大きくなると空気抵抗が増すということである。
なぜ空気密度が大きくなると空気抵抗になるのか
出典:アンパンマン
空気密度は「空気の重さ」みたいなものと考えればよい。
例えばあんこがみっちり詰まった高級あんパンと中身がすっからかんの安いあんパンをイメージしてもらえれば理解しやすい。
空気密度はあんパンの中身がどれくらい詰まっているかと同じようなものである。
そしてあなたが小人になったことをイメージして、あんパンの中を移動してみて欲しい。
あんパンの中身がみっちり詰まっていると小人であるあなたは移動に苦労したのではないだろうか?
反対にあんパンの中身がスッカスカならば簡単に移動できるのではないだろうか?
密度の高低によって、その空間を移動する物体の移動しやすさが変化=燃費が変化するということである。
このとき密度が低いほど移動しやすいということはアンパンマンのあんパンでイメージできたはずだ!(笑)
冬になるとどれくらい空気密度が高まるのか
空気密度は小難しい式を解くことで算出することができる。
だがその式自体に全く興味がないのでここでは省略する。
代わりに空気密度を簡単に計算してくれるサイトを発掘したのであなたも試してみて欲しい。
温度、湿度、気圧を入れるだけで欲しい「空気密度」のデータを得られた。
面倒ごとを省いてくれた作者に感謝である。(笑)
https://keisan.casio.jp/exec/user/1474348018
実際に計算してみた。
気温(℃) |
湿度 (%) |
気圧 (hPa) |
空気密度(g/m3) |
|
---|---|---|---|---|
冬 |
0 |
40 |
1013 |
1.292 |
夏 |
25 |
70 |
1013 |
1.174 |
冬と夏で適当に数字を当てはめて計算してみた。
すると、冬と夏で空気密度が約9%異なることがわかった。
実は気象庁の2014年の東京月別データを使って事前に計算したときも約9%であったので、まんざら適当に当てはめたこの数字が間違いというわけでもないらしい。(笑)
空気密度の増加=空気抵抗の増加=燃費の悪化
空気抵抗=CD値×前方投影面積×(速度×速度)×空気密度×1/2
またこの式に戻るが、冬になると夏に比べて空気密度が約9%増加することがわかった。
つまりこれは冬になると約9%空気抵抗が増加することと同じことを意味している。
空気抵抗が9%増加することがそのまま燃費9%ダウンに結び付くわけではないが、冬になると燃費が悪くなる要因の一つとして「空気密度の変化」を頭の片隅に置いておくのも悪くないだろう。