伝説の29連勝、グループAで無敵を誇ったR32GT-Rの不敗神話

出典:スカイラインGT-R

 

名車と呼ばれる車には必ずドラマがある

R32GT-Rもそんなドラマチックな運命とともに生まれてきた車の一つである。

 

1969年にツーリングカー選手権でレースデビューした「スカイライン2000GT-R」は圧倒的な強さで勝ちまくり、なんと4年間で通算50勝をあげた。

 

このとき、「GT-R」の不敗神話は生まれた。

 

しかし、オイルショックや排ガス規制などにより、スカイライン2000GT-Rは活動自粛を余儀なくされ、不敗神話のRはサーキットから姿を消してしまう。

 

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「不敗神話」は過去の栄光に

出典:BMW

 

強すぎるライバル

1985年、欧州で人気だったレギュレーション「グループA」をもとに全日本ツーリングカー選手権がスタートする。

 

日産はR30スカイラインやR31スカイラインを全日本ツーリングカー選手権に参戦させたが、結果は思わしくない。

 

全日本ツーリングカー選手権での日産スカイラインのライバルはBMW M3などに代表される外車勢だった。

 

強敵だったBMW M3などの外車はグループAで勝つために生まれた、言わば「サラブレッド」なのである。

 

当然、レースで勝つために生み出されたマシン相手では分が悪い。

 

レースで勝つための車が必要だった。

 

グループAで勝つために生まれた「GT-R」

出典:スカイラインGT-R

 

至上命題は「グループA必勝

R32GT-RはグループAで勝つために生まれてきた車なのである。

 

そのため、設計思想の段階からレースで勝つことを重視した車づくりが行われ、R32GT-RはグループAで勝つために様々な「新技術」が投入された。

 

そんな流れを受けるかのように日産社内である動きがあった。

 

それが「901運動」である。

 

901運動とは?

当時の日産社内では「901運動」という一大ムーブメントが起こっていた。

 

「901運動」とは1990年代に「技術で世界一になる」という全社を挙げた取り組みである。

 

「901運動」をテーマに日産は持てる技術を注ぎ込み、R32GT-Rを生み出した。

 

R32GT-Rに盛り込まれた新技術について見ていこう。

 

名機「RB26DETT」の誕生

出典:RB26DETT

 

なぜ「2.6L」なんて中途半端な排気量なのか

普通、自動車税の関係からエンジンの排気量は0.5L刻みで設計されることが多い。

 

だがR32GT-Rに搭載されたエンジンはなぜか「2.6L」と中途半端な排気量なのである。

 

この「2.6L」にはちゃんとした意味があるのだ。

 

結論から言うと「2.6L」という排気量はレースで勝つために日産が導き出した答えである。

 

当時のレギュレーションは排気量によって区分けされており、ターボ車は排気量に1.7を掛けた値が排気量としてみなしていた。

 

日産はそこに目を付けたのである。

 

「2.6L」は勝つために有利な排気量だった

2.6Lに1.7を掛けると、4.5L未満の4.42Lとなる。

 

4.5L未満の場合、グループAでは有利な条件で戦えるのである。

 

最低車重が1260kgであったり、ホイールが純正から2インチアップしても良かったり、10インチの太いタイヤを履けたりなどなど、排気量を「2.6L」にすることで得られる恩恵はかなり大きい。

 

対してスープラは排気量3.0Lのターボであったため、5.2L換算され不利な条件でレースを戦わなければならなかった。

 

その点R32GT-Rはレースで美味しい思いをするために何とも中途半端な「2.6L」という排気量を選択する必要があった。

 

とにかく頑丈に作ってパワーで勝負!

ターボ車の場合、同じ排気量ならブースト圧が高いほどパワーが出る。

 

ならばハイブーストにも余裕で耐えられる頑丈なエンジンを作ればレースで勝てるという考えがRB26DETTにそのまま応用された。

 

そのためRB26DETTは軽量なアルミではなく重い鉄ブロックを採用した。

 

なぜならば鉄ブロックの方がハイブーストに耐えられるタフなエンジンになるからである。

 

また、タービンも1個より2個付いてた方がブーストを高くできるだろうと考え、迷わずツインターボを採用した。

 

その結果、R32GT-Rに搭載されたRB26DETTは異様に頑丈で、とにかくパワフルなエンジンに仕上がった。

 

軽さより、パワーを選んだのである。

 

FRから4WDに?「アテーサET-S」の奇抜なアイディア

出典:カルソニック

 

FRだとトラクションが掛からない

軽さよりパワーだ!ということで設計されたRB26DETTはブースト1.4で550馬力を余裕で叩き出すモンスターエンジンに仕上げられた。

 

圧倒的なパワーゆえ、別の問題が浮かんできた。

 

FRは、後輪タイヤ2本でフロントに搭載されたエンジンパワーを伝える駆動方式である。

 

エンジンパワーが控えめな車であればトラクションが問題になることは少ない。

 

しかし、R32GT-Rに搭載されたRB26DETTは楽々500馬力を超えてくるようなハイパワーエンジンであり、後輪タイヤ2本ではとても500馬力オーバーもの大パワーを受け止めることは不可能である。

 

それなら4WDにしちゃえばいい

「タイヤ2本で足りないなら、タイヤ4本に分割すれば良いだろう」と考えるまでは普通の発想である。

 

だが、4WDにすることでトラクションは確保することが可能だが、別の問題が浮上してくる。

 

それは「曲がらない」ということである。

 

フロントタイヤも駆動に使われるため、FRと比べて旋回性能が劣ってしまうのである。

 

必要なときだけ4WDにすれば…最強なんじゃないか?

FRだと旋回性能は高いけどトラクションが掛からなくて遅いし、4WDだとトラクションは最高だけど、旋回性能は劣ってしまう。

 

もしFRと4WDの良いとこ取りが出来たら、トラクション性能と旋回性能を両立した最強の駆動方式になるのではないか?

 

アテーサET-Sはそんな発想のもと生み出された日産の新技術である。

 

普段はFRで良いけど、滑ったら4WDに!

アテーサET-Sは素直なハンドリングと4WDの圧倒的なトラクションを両立した駆動方式である。

 

コーナー入り口からクリッピングまではFRの優れたハンドリングを活かし、クリッピングを過ぎてコーナーを立ち上がって行くときは4WDの圧倒的なトラクションで立ち上がって行く。

 

まさにFRと4WDの良いとこ取りなのである。

 

「RB26DETT」 + 「アテーサET-S」 = 不敗神話の復活

出典:日産自動車

 

29戦全勝という伝説を残した

RB26DETTという強力無比なエンジンと、アテーサET-SというFRと4WDの良いとこ取りを実現した駆動方式という2つの武器を手に入れたR32GT-Rは負けることを知らない。

 

1990年にレースデビューしたR32GT-Rは、R30、R31で苦戦してきた外国勢のライバル達を完膚なきまでに叩きのめした。

 

1991年にはR32GT-Rが6台体制になり、1992年にはGT-Rのワンメイクレース状態で、遂にR32GT-Rは全日本ツーリングカー選手権が幕を閉じた1993年まで、29戦全勝という伝説を残したのである。

 

1969年のスカイライン2000GT-Rの不敗神話は、R32GT-Rによって完全復活を果たしたのであった。

 

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