なぜFRは雪道に弱いのか?FRが雪道でスタックしやすい理由とその対策とは?

出典:ドリ天

 

FR車は一般的に雪に弱いもの

S2000やシルビア、86、RX-7など、スポーツカーにはFR車が多く、FR車は一般的に雪に弱いと言われている。

 

そこで今回は、FR車がなぜ雪に弱いと言われているのか、原因は何なのか、また、突然の雪にどう対処すればよいのかについて説明していきたいと思う。

 

最低限知っておきたい「スポーツカー」のこと 

 

 

 

FRとは?

出典:ホンダ S2000

 

FRとは、Front Engine Rear Drive(フロントエンジン、リアドライブ)の略

FRは車体の前に動力源であるエンジンを積み、後輪で地面に動力を伝える駆動方式のことを示す。

 

FRは最も重いエンジンがフロント側にあって、駆動輪はリアである。

 

一般的に駆動輪の上に重たいエンジンが乗っている方が、無駄なく地面にパワーを伝えることができる。

 

この能力のことをトラクション(駆動力)と呼び、トラクションが高いとか低いとかで評価するのである。

 

アニメ「頭文字D」で須藤京一が運転するエボ3は、ミスファイヤリングシステムによる大パワーをトラクション性能の高い4WDで伝えている。

 

これがFRなどの2WDでは思うようにエンジンパワーを路面に伝えられず、京一の走りはできないだろう。

 

実際、京一はターボ+4WDでなければ車でないとまで言っていることから、トラクション性能に並々ならぬこだわりを持っていることがわかるだろう。

 

つまり、トラクション性能は以下の方程式で考えられる。

 

タイヤの摩擦力(トラクション性能)=タイヤと地面の摩擦係数μ? タイヤに掛かる荷重

タイヤの摩擦力(トラクション性能)は、タイヤの上に重い物が乗っているほど摩擦力を大きくでき、エンジンパワーを伝えるのに有利であることがわかる。

 

つまり、FRは4WDに比べてエンジンパワーを半分のタイヤで伝えなければならず、さらに荷重の乗っていないリアタイヤで駆動することから、

 

トラクション性能でみると不利な駆動方式であることが理解できると思う。

 

トラクションが弱いと雪道でスタックしやすくなる

出典:giver.jp

 

FRは最もトラクション性能が低い

FRはトラクションが最も劣る駆動方式であることは分かっていただけただろう。

 

ではなぜ、トラクションが低いと雪道でスタックしやすくなるのか考えていくこととする。

 

トラクションは簡単に言うとタイヤの摩擦力の大きさである。

 

簡単に言うと、エンジンパワーがタイヤの摩擦力を上回ってしまうと、タイヤはたちまち空転してしまう。

 

そのため、大パワーFR車はエンジンパワーが大きく、その分タイヤの摩擦力を上回るパワーを発揮してしまうために雪道に弱いといえる。

 

摩擦係数μは路面の状態で変化するもの

タイヤの摩擦力はタイヤと地面の摩擦係数μの大小にも大きく左右される。

 

車を運転したことのある人ならわかると思うが、ドライの乾いた路面よりも雨で濡れた路面の方が滑りやすいのと同じである。

 

数字を出すと、乾燥した舗装路の摩擦係数μは1.0、雪道の摩擦係数μは0.3程度と言われており、雪道の摩擦係数μはドライ路面のたった30%しかないことがわかる。

 

これは、乾いたアスファルトから雪道になるだけで、トラクション性能がわずか30%になってしまうことを示している。

 

例えばフィギュアスケートなどは、摩擦係数μが低い氷の上でなければできないスポーツであり、スムーズに滑れることを良しとする。

 

しかし、雪道の車の運転に関して言えば、タイヤが滑ることは即事故に繋がるため、少しでも雪道での摩擦係数μを上げるため、スタッドレスタイヤに履き替えるのである。

 

君は、コントロール不能の恐怖を味わったことがあるか?

元愛車のシルビア

 

雪道+FR+ノーマルタイヤ=自殺行為

ずいぶん昔のことになるが、私は雪が降り積もるなか、FR車であるシルビアにノーマルタイヤを履かせたまま、40km近い道のりを走って帰宅したことがある。

 

このときは帰り際になってきて珍しく雪が降り、なおかつ翌日には大雪になるという予報が出ていた。

 

自宅から40km近くも離れているため、万が一予報通りに大雪が降ってしまえばしばらく自宅に帰ることはできないだろう。

 

そう考えた私は、仕方なくノーマルタイヤのまま帰宅することにした。

 

進めない、止まれない、曲がれないの3重苦

普段、どれほどタイヤのグリップに頼って走っているのかを身をもって経験することができた。

 

信号待ちで発進するときですらテールスライドは付き物だし、カウンターを当てなければ簡単にスピンしてしまうほどであった。

 

さらに、赤信号などで止まるときは遥か手前からブレーキを掛けなければ、全くと言っていいほど止まれなかった。

 

当時シルビアはABSを切って乗っていたため、すぐにブレーキングでタイヤがロックしてしまい、自分の足でロックしないようにする「人間ABS」が必須であった。

 

人間ABS自体は既に習得していた技術であったため、問題なかったが、タイヤのグリップ以上に止まることはできないことを体で学ぶことができた。

 

曲がることも非常に難しく、ちょっとでも進入スピードが速いと簡単にアンダーステアで電柱にぶつかりそうになるし、

 

ラフにアクセルを開ければ簡単にリアが出てカウンターを当てないと周囲の車に激突してしまう。

 

もうこんな怖い思いをするのはごめんだが、この経験は非常に役立っている。

 

雪道をノーマルタイヤで走ると駆動方式の差が色濃く理解できるため、広い駐車場などで試してみるのなら悪くはないだろう。

 

駆動方式とスポーツカー FF編 

 

雪道でスタックしやすいFR車の特徴

元愛車のシルビア

 

LSDの入っていない(オープンデフ)FRは雪道最弱

LSDの有無によって雪道でのスタックしやすさが明らかになる出来事があった。

 

雪が20〜30pほど降り積もったある日のことである。

 

家の駐車場には2台のFR車が停まっており、1台はスタッドレスを履いたアルテッツァ、もう1台は私のシルビアでノーマルタイヤを履いている状態。

 

2台を駐車場から移動させようとしたとき、1台の車はスタックしてしまい、自力では動けず、もう1台はタイヤが空転しながらも駐車場内を動かすことができた。

 

さて、スタックせずに自力で動くことが出来たのはどちらの車であろうか?

 

FR車にとって、LSDはスタッドレスより大事なのかもしれない

正解はシルビアである。

 

スタッドレスを履いているアルテッツァがスタックして、スタッドレスを履いてないシルビアが動けるという世にも奇妙な物語である。

 

アルテッツァとシルビアは同じFRであるにも関わらず、スタッドレスを履いたアルテッツァはスタックして動けず、スタッドレスを履いていないシルビアは動くことができた。

 

この2台の命運を分けたのはLSDの有無である。

 

そう、シルビアには機械式LSDを付けていたが、アルテッツァは純正のオープンデフであった。

 

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LSDとは

出典:シルビア

 

LSDとは差動制限付ディファレンシャルギヤ(差動制限付デフ)のこと

LSDは簡単に言うと、駆動輪の左右の回転差を無くすものである。

 

コーナーを曲がっているとき、外側と内側では移動する距離が違うのである。

 

外側のタイヤの方が移動距離が長く、内側のタイヤは移動距離が短くなる。

 

これがもし、外側と内側のタイヤが固定されて一緒に回転したら、スムーズにコーナーを曲がることはできない。

 

それじゃ困るということで、一般的な車はコーナリングのときに外側と内側のタイヤがスムーズに回転できるようなデフ(オープンデフ)が組み込まれているのである。

 

オープンデフはある条件のとき、トラクション性能が0になる

オープンデフの厄介な特徴は、駆動輪が片方でも浮いたりスタックしてしまうと、一切トラクションが掛からないということである。

 

スタックした方のタイヤに全ての駆動力が加わり、普通に地面に設置しているタイヤに駆動力が伝わらない。

 

こうなると片方のタイヤだけが空転するだけで、自力でスタックから抜け出すことはできない。

 

実際にオープンデフのアルテッツァは、平らな駐車場でスタックし、後ろから押してもらわないと全く動けないほどのありさまであった。

 

機械式LSDを入れるとFR車のトラクション性能は大幅UPする

シルビアに組み込まれていた機械式LSDはオープンデフと異なり、片輪が浮いていてももう片方のタイヤに駆動力を伝えることができる。

 

LSDは左右の駆動輪をリジットに固定するような働きがあるため、スタックしにくく、トラクションを伝えることができるのである。

 

そのため機械式LSDを組んでいたシルビアは、スタッドレスを履いていないにも関わらず、スタックせずに雪道を動かすことができた。

 

FRを雪道に強くする方法

S2000をもっと愉しむチューニング

 

リアに荷重を掛けろ!

シルビアやスカイラインのようにフロントヘビーな車に比べて、S2000やRX-7のような前後重量配分が50:50の車の方が駆動輪の荷重が大きく、トラクション性能が高い。

 

そのため、リアのトランクなどに重りを乗せることはトラクション性能向上に効果的である。

 

実際に私もシルビアのトランクに米俵などを積んでトラクション性能を確保していたこともある。

 

アクセルを控えめに(エンジンパワーを控えめにする)

スープラやフェアレディZなどの大パワーFR車よりも、86などのアンダーパワーなFR車の方がタイヤが空転しにくく、トラクションが掛かりやすい。

 

いつも以上に慎重なアクセル操作をすることが必要であることは間違いない。

 

機械式LSDを入れる

アルテッツァの例のように、オープンデフではトラクションが抜けてしまうため、機械式LSDを組んでいる方が確実にトラクションを伝えることができる。

 

これがFR車を雪道に強くする最も確実で効果のある方法である。

 

以上の3点がFR車を雪道に強くする方法である。

 

それに加えて、ドライバーのドラテク向上がFRで雪道を走るには必要不可欠であろう。

 

最低限知っておきたい「スポーツカー」のこと 

 


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