アルミ製のホイールナットはやめろ!タイヤが外れる危険あり
出典:市販のアルミ製ホイールナットの例
あなたはアルミ製のホイールナットを使用してはいないだろうか?
アルミ製のレーシングナットは色鮮やかだったり軽量だったりするため、ドレスアップを目的として愛車に導入する人や、バネ下重量の軽減を狙って装着する人が後を絶たない。
そこで、アルミ製(ジュラルミン)のホイールナット・レーシングナットを装着するとどうなるか、実際に私のS2000に装着されていたアルミ製のホイールナットを見て判断して頂きたい。
これがリアル
前オーナーが装着していたアルミ製レーシングナット
アルミ製ホイールナットは簡単に破損する
私は最初何が起こったか理解できなかった。
家にあったS15シルビアのタイヤセットをS2000に履かせてみようと、S2000をジャッキアップしてホイールナットを外したときである。
なんとホイールナットの先端が外れてしまっていたのである。
慌てた私はホイールナットの先端を探したが見つからなかった。
「これはやばいぞ!」と隈なく辺りを目を凝らしてみてみると、なんとホイールナットの先端はアルミホイールにめり込んでいた。
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なぜこうなった?
アルミ製ホイールナットが破損してしまった原因は3つ
@強く締めすぎ
Aハブボルトとアルミ製ホイールナットの熱膨張率の違い
B鉄とアルミの強度の違い
の3つが考えられる。
この3つの原因について、それぞれを自分のケースに当てはめて原因を探ってみることにした。
原因@ 強く締めすぎ?
出典:トルクレンチを使用したタイヤ交換(みんカラ)
ホイールナットを強く締めすぎることはありがちなミス
基本的に普通の車はM12のハブボルトを使用しているため、締め付けトルクは100N・m(10kN・m)程度で十分である。
締め付けトルクはボルトを締める力の強さと考えればよい。
ホイールナットを締め付ける強さは規格で決まっており、それに合わせるために「トルクレンチ」を使用するのが一般的である。
トルクレンチを使用することで、既定のトルクが掛かると「カチン」とクリック音がするため、すべてのホイールナットを均一の締め付けトルクで管理することができる。
たまに力いっぱい締め付ける人や、足で蹴っ飛ばすように締め付ける人がいるが、それらは大抵「オーバートルク」である。
簡単に言うと力を入れすぎ、馬鹿力は禁物ということである。
だがしかし、私はトルクレンチできちんと締め付けトルクを管理していたため、オーバートルクによるホイールナットの破損は考えにくい。
つまり原因@の強く締めすぎ?は私には当てはまらないといえる。
原因A ハブボルトとアルミ製ホイールナットの熱膨張率の違い
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ハブボルトは「鉄製」
ハブボルトとは上の画像のブレーキローターから飛び出している5本のボルトのことを指す。
このハブボルトにホイールナットを締め付けていく構造になっている。
そしてこのハブボルトは「鉄製」なのである。それに対してホイールナットは「アルミ製」であった。
すると何が起こるのか。
アルミは鉄の2倍熱膨張する
見てわかるように、ハブボルトはブレーキローターの至近距離に位置している。
そのため、ハブボルトはかなりの高温に晒されることが考えられる。
事実、真っ赤になったブレーキローターは500〜600℃くらいであり、かなり高温である。
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すると熱による影響が発生するのである。
熱による影響に一つに「熱膨張」がある。
熱膨張のしやすさのパラメーターに熱膨張率という指標があり、鉄とアルミを比較してみると、鉄は12、アルミは23とアルミの方がおよそ2倍熱膨張しやすいということがわかった。
鉄製ハブボルトとアルミ製ホイールナットは「BAD」な組み合わせ
ある温度に達したときに熱膨張率が異なるとどうなるのか?
先ほども話したが、ホイールの固定はホイールナットをハブボルトに締め付けて行う。
つまり、ハブボルトとホイールナットの熱膨張率が違うと、材質の組み合わせによって「緩む」ということが考えられる。
締め付ける側のホイールナットがアルミ製だと熱膨張によって緩みやすくなってしまうことが考えられる。
つまり脱輪の危険があるということである。
やはり同程度に熱膨張率のハブボルトとホイールナットが望ましい。
当然純正はスチール製のハブボルトとホイールナットである。
むやみにアルミ製ホイールナットにするとデチューンになるということである。
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原因B 鉄とアルミの強度の違い
出典:ぺちゃんこに潰れた「アルミ缶」
簡単に潰せる「アルミ缶」、人力では簡単に潰せない「スチール缶」
あなたも空き缶を処分するときに、なるべくかさを減らそうと空き缶を潰したことはないだろうか?
そのときやたら簡単に潰せる空き缶と、微動だにしない空き缶があったに違いない。
前者は「アルミ缶」であり、後者は「スチール缶(鉄製)」である。
この違いはアルミと鉄の強度の違いにある。
一般的に鉄はアルミの3倍の強度があることが知られている。
そのため、アルミで鉄と同じくらいの強度を出すためには厚くするほかない。
そのため、鉄チンホイールは厚みのない薄いホイールだが、アルミホイールは強度を出すために分厚くなっている。
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ホイールナットは鉄もアルミも同形状?
これが問題なのである。ホイールのように鉄の代わりにアルミを使うなら、その分だけ分厚くすれば強度を稼げる。
しかし、ホイールナットの場合は鉄もアルミも同形状なのである。
これはやばくないですか?ということを私は伝えたいのである。
簡単に言うと、純正の鉄製ホイールナットから社外のアルミ製ホイールナットに変更すると、それだけで強度が1/3になってしまうということである。
これではデチューンと言う他無いではないか。
アルミ製ホイールナットが壊れたのは、Aの熱膨張とBの強度が関わっていることは間違いない。
私は自動車部品メーカーのエンジニアをしているため、「安全率3倍」という言葉をよく耳にする。
これは、普段使いの3倍の強度を持たせておけば安全に使えるという意味である。
つまり、純正から社外のアルミ製ホイールナットにするだけで安全率1倍になってしまい、日常使いで壊れやすくなるということである。
実際にアルミ製ホイールナットが壊れているのが何よりの証拠であろう。
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私が選んだのは「クロモリ製」レーシングナット
クロモリ製レーシングナットをチョイス
レースの世界で実績があるという「キラーワード」
この言葉を聞かされてしまうと、つい買ってしまう。
そういう意味では優れたコピーライティングであると言わざるを得ない。
私のように走ることが大好きな人種は「レースの世界で実績がある」という言葉には弱いのではないだろうか?(笑)
クロモリは鉄にクロムを混ぜた合金で、熱膨張率や強度が鉄と同程度でありながら鉄より軽量という優れた材料である。
少々値が張ったが、安心を買うと考えれば安い買い物である。
アルミ製ホイールナットを付けてガチ走りをする人はいない
いままでアルミ製ホイールナットのマイナスを挙げてきたが、どう考えてもレースの世界には不適である。
ドレスアップ目的の人なら様々な色味があって良いのかもしれないが、ちょっとでもスピードを出す人はアルミ製ホイールナットは避けるべきである。
私のようにアルミ製ホイールナットの先端がアルミホイールに圧着して取れなくなるという悲しい事故が起きるリスクが高いからである。
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