S2000乗りがバカ正直にS660を試乗レビュー!その走りに「S」はあるのか?
比較対象の愛車S2000はチューニングカーである(S2000をもっと愉しむチューニング)
比較対象は愛車S2000 タイプV(AP1-130系)
私の愛車はS2000である。ワゴンRで通勤する一方、休日はセカンドカーである「S2000」に乗る。
ホンダ50周年記念として開発され、市販車としては異常なまでのこだわりを持って世に出された。
S2000のためだけに専用設計されたシャーシ、エンジン、ミッションなどによって、その走りはかのF1を彷彿とさせるレーシングで官能的なものである。
私にとってS2000は単なるスポーツカーではなく、心の拠り所であり、私の魂である。
そこで今回は、スポーツカーをこよなく愛するS2000乗りの私が、同じホンダの「S」を名乗るS660のMT車(チューニングカー)に試乗して感じたことをまとめてみた。
S2000乗りのバカ正直な試乗レビュー!噂のあの車の走りはいかに?
「ホンダ S660(α)」のスペックをS2000と比較
ディーラーにて試乗させて頂いた「ホンダ S660」
S660と愛車S2000のスペックを比較してみた
主要スペック | S660(α) | 愛車S2000(AP1-130系)タイプV |
---|---|---|
エンジン |
S07A (ターボ)直3 |
F20C (NA)直4 |
排気量 | 658cc | 1997cc |
馬力 | 64PS / 6000rpm | 250PS / 8300rpm |
トルク | 10.6kg・m / 2600rpm | 22.2kg・m / 7500rpm |
車重 | 830kg | 1270kg |
駆動方式 | MR | FR |
トランスミッション | 6MT | 6MT |
サスペンション(前/後) | 前後マクファーソンストラット | 前後ダブルウィッシュボーン |
軽自動車のS660と排気量が約3倍のS2000を比べるのはどうかと思うが、同じ「ホンダのS」としてS660は気になる存在である。
軽量コンパクトなMRで830kgのS660は「和製エリーゼ」のようなポテンシャルを感じるが、果たしてその走りはどれほど愉しいものなんだろうか?
軽自動車ゆえの「エンジン性能」がスポーツカーとしてのS660にどう影響するのか。
実際に試乗して、両者の特徴を比べてみようではないか。
今回試乗したS660は、偶然にもディーラーのセールスマンの私有車で、吸排気チューン+フラッシュエディター(フェーズ3)の85馬力仕様で、車高調の入った「チューニングカー」であった。
「ターボとNA」徹底比較!スポーツカー購入後に後悔しないための「エンジン」選び
スポーツカーのエンジンとして愉しいエンジンはどっち?
S660のエンジンルーム
愛車S2000のエンジンルーム
S660は低回転では力強いが、愉しめるのは5000回転くらいまで
S660のエンジンは、ホンダNシリーズと基本設計が共通の「エコなターボエンジン」である。
かつて、過激な超高回転型NAエンジン「VTEC」により、エンジン屋としての名声を欲しいままにしていたホンダだが、果たしてS660の「エコなターボエンジン」はどうなんだろうか?
結論としては「S660のエンジンはエコ過ぎてぶん回してもつまらない」と感じた。
分かりやすくカムが切り替わって、高回転域でまるで別人のようにレーシングエンジンになるS2000とは明確に違うフィーリングである。
S660は、3000rpmくらいまでの日常使う回転領域ではS2000以上にトルクフルな感じで、思わず高回転のパンチを期待してしまうのだが、それも5000回転で頭打ちである。
7700回転のレッドゾーンまで回してみても「ただ回っているだけ」なS660は、回せば回すほど刺激的なS2000に慣れている私には酷く退屈に感じてしまった。
試乗車は吸排気チューン+フラッシュエディター(フェーズ3)の85馬力仕様だったが、それでも「物足りなかった」のだから、きっとノーマル仕様はもっとかったるいに違いない。
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気軽にオープンを愉しめるのはどっち?
S660は手動で巻き取り式
愛車S2000は電動
S2000に比べて、S660は面倒くさ過ぎてオープンにする気にならない
結論から先に言うと、S660はオープンカーではなくハードトップ化して、屋根の空かないスポーツカーとして乗った方が満足感が高いのではないかと思う。
なぜそう思ったのかと言うと、S660はオープンにするのがとにかく面倒なのだ。
タルガトップ式のオープンカーであるS660をオープンにする場合、手動で幌を巻き取らなければならず、そのときは必ず運転席から降りなくてはならない。
取り外した幌は唯一のフロント収納スペースを潰すか、助手席に乗せるしかない。
手馴れた人であっても1〜2分くらい時間が掛かってしまうのも正直面倒で、外した幌も結構重いのもオープンにする機会を減らすだろう。
私が愛車S2000に乗るときは「ほぼオープン状態」という事実
それは、S2000をオープンにするのが至極「楽チン」だからである。
車内からAピラーと幌を固定しているフックを2つ外した後、スイッチで電動幌を開けるだけでオープンカーに早変わりなのである。
S2000の幌開閉時間は「6秒」と、電動幌では世界最速タイムなのである。
幌は電動で折りたたまれるため、もちろんトランクスペースは一切犠牲になることはない。
私は「せっかちで面倒なのは嫌」なので、S2000の「仕事の早さ」は大変お気に入りである。(笑)
仮に私がS660を購入したとして、実際にオープンカーとして愉しむのは納車時の1回だけではないだろうか?(笑)
オープンカーを愉しむための必需品とは?定番のあのアイテムは実は不要だった?
ABCペダルの操作感、ヒール&トゥのやりやすさは?
S660はいかにも狭そうなのに乗ったら意外に広い
愛車S2000は3ナンバーにしては意外と狭い(笑)
アクセル、ブレーキ、クラッチは軽くて楽チン!ヒール&トゥは結構決まる
S660は現代のスポーツカーらしく、アクセル、ブレーキ、クラッチペダルは軽くて楽チンである。
逆にS2000はアクセルペダルは重く、ブレーキペダルに至ってはENDLESS「RacingMONO4」でS2000のフロントブレーキを強化せよ!によって、物凄い剛性感である。
MTスポーツカー乗りにとって運転の醍醐味である「ヒール&トゥ」のしやすさだが、S660は結構やりやすく感じた。
「ある程度のスポーツドライビングで」というかっこ付きだが、S2000と特に変わらずヒール&トゥは決まるだろう。
S660のシフトフィールは妙に軽く、剛性感や緻密さはS2000の方が圧倒的に気持ちいい。
S660の走りには、間違いなく「Sの血統」が流れている
S660のコーナリングスピードはスーパーカー顔負け!
アクセルOFFでスッとフロントが入るMR独特のコーナリングは正直新鮮!
S660はドライバーの後ろにエンジンがある「MR」という駆動方式である。
吸排気チューン+フラッシュエディター(フェーズ3)によって、85馬力仕様にチューニングされたS660は、アクセルOFFの度に「カシュン」とターボ車なサウンドが聞こえるのも愉しい演出だ。
やはりエンジンが後ろにあるというだけで、「非日常感」が半端じゃない。
街中を走らせているだけでもS660は愉しく、思わず笑顔になってしまうのがはっきりとわかった。
この感覚はS2000とは明確に異なる方向の「愉しさ」である。
少なからずS2000は「乗せて頂いている感」があるのだが、S660は「自分で操ってる感」がすごい。
チューニングされているとはいえ、軽自動車S660のパワー感は手中に収まる感じであり、830kgと軽量コンパクトな車体もあって、「街中をキビキビ」と走ってくれる。
VSAをはじめとした数々の安全装備やオーバースペックのタイヤ「ネオバ」によって守られたS660は、狭い峠やワインディングロードを超安全に超愉しく走れるに違いない。
サーキットで愉しいのはS2000
S660は優れた電子制御と、エンジンパワーより完全に勝ったシャーシとワイドタイヤによって、「何をやってもスピンしない」くらいスタビリティが高い。
間違った操作をしても、S660は車体側で何事もなかったように制御され、真のドライビングプレジャーを感じることは難しいだろう。
その点、ABSしかない愛車S2000はサーキットでは最高に愉しい車のひとつである。
私は愛車S2000でのサーキット走行が愉し過ぎて、サーキット初回で盛大にクラッシュしてしまった。
間違った操作をしたら「それは間違っている」とハッキリ教えてくれるS2000は、スポーツカーの本質とは何かを教えてくれる。
初めてサーキットの走行会に一人で参加してみてわかった3つのこと
S660はチューニングで100馬力超えも狙えるが、限界は低い
定番のHKS「GT100R」で100馬力オーバー!
HKS「GT100R+」で120馬力も狙えるが、エンジン寿命とトレードオフ
街中や峠、ワインディングロードでは超愉しく走れそうなS660だが、サーキットでは物足りなく感じるだろう。
その原因は「物足りないエンジンパワー」にあり、実際にS660を入手した人のほとんどは「チューニング」によってパワーアップをしたいと思うはずだ。
試乗車のように吸排気チューン+フラッシュエディター(フェーズ3)で純正の1.5倍くらいのパワーを手7に入れることは可能で、これで十分愉しめる人も多いと思う。
それ以上のパワー感が欲しい人はHKSの「GT100R」キットを装着すれば良いだろう。
100〜120馬力あたりまで狙えるようになり、S660で唯一足りなかった「エンジンパワー」を手に入れられるだろう。
逆に言えば、エンジンパワー以外の性能が異様に高いからこそ、バランス的にパワー不足を感じてしまうということである。
200万円そこそこで買えるS660は、ホンダが我々に与えてくれた「軽規格のスーパーカー」なのである。
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