「ダックテール」スポイラーだけが持つ、GTウイングには無い意外な空力効果とは?
出典:ポルシェ911
ダックテールスポイラーとは
ダックテールスポイラーは文字の如く、アヒルの尻尾=ダックテールから来ている。
上の画像のように、ポルシェ911などはわかりやすい例で、車体後方に突き出すようにしてダックテールスポイラーが装着されている。
ダックテールスポイラーは単なる「デザイン」的なものではなく、空力を改善する「エアロパーツ」である。
そこで今回は「速く走るためになぜダックテールスポイラーが必要なのか」、ダックテールスポイラーの効果と考え方についてお話していく。
なぜポルシェがダックテールスポイラーを付けるのか?理由と効果は?
出典:ポルシェGT3
911固有のボディ形状はリアが「リフト」して危ない
ポルシェのダックテールスポイラーは他の車種に比べて明らかに「過激」で、大きさと跳ね上げる角度の2つが大人げないほど強烈である。
なぜポルシェのダックテールはこれほど過激なデザインなのかというと、ポルシェ911の独特なボディ形状による空力的なデメリットを打ち消すためである。
ポルシェはルーフからリアバンパー後端まで一気に吹き降ろすようなボディ形状をしている。
ポルシェのボディ形状は、流線形に近く空気抵抗が少ないが、それゆえ「リアがリフト」してしまうのである。
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そのため、ポルシェ911は過激なダックテールスポイラーを装着することで、デメリットを打ち消そうとしているのである。
ダックテールスポイラーの効果は「リフト」を「ダウンフォース」に変える!
ダックテールスポイラーは見たまんまの効果で、空気を上向きに跳ね上げるように装着されている。
ルーフから斜め下に吹き下ろしてくる空気の流れをダックテールスポイラーが上向きに跳ね上げる。
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すると、空気の流れが下向きから上向きに向きを変え、その反作用(壁を押したら壁に押し返されるのと同じ効果)によって車体は下向きの力を受ける。
ダックテールスポイラーによる空力的な効果は、空気の流れを変えて「ダウンフォース」を稼ぐことを狙いとしている。
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ダックテールスポイラーによってもたらされる「意外な空力効果」とは?
出典:ムーンクラフト (上:ダックテールなし、下:ダックテールあり)
リアディフューザーの効果を高める!なんとダウンフォースを9.8%もUP!
ダックテールスポイラーの有無によって、リアバンパー下部(リアディフューザー)のダウンフォース量がなんと9.8%UPするというデータがムーンクラフトより公表されている。
ダックテールを装着することで、ボディ上面に発生するダウンフォースとは別にリアディフューザーの効果が9.8%も上がるなんて驚きの効果である。
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ダックテールなしの場合、車体床下の空気の行き場がない
ダックテールなしの場合、ルーフから吹き降ろしてきた空気の流れはそのまま車体後方まで吹き降ろしていくことがわかる。
車体付近だけでなく、はるかに上の方の空気も下向きに流れている。
そのためか、車体床下を通る空気は上手く流れずに剥離してしまい、渦を巻いているようにも見える。
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これはルーフから吹き降ろす空気の流れによって、車体床下を通ってくる空気の行き場がないことが原因である。
その結果、スムーズに空気が車体床下から抜けないため、リアディフューザーの効果が発揮できず、ダウンフォースを稼げなくなってしまっている。
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ダックテール装着によって「リアディフューザー」と「GTウイング」が機能する!
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小さくてもダックテールスポイラーの効果は大きい
ダックテールありの場合、ルーフから吹き降ろしてきた空気の流れがそのまま車体後方まで吹き降ろすことなく、ダックテールによって跳ね上げられる。
その結果、車体上部の空気の流れは下向きから水平方向に変化している。
ダックテールによって空気が跳ね上げられているためか、ダックテール直後の空気が上向きに流れていることが画像より見て取れる。
つまり、ダックテール装着によって空気が跳ね上げられ、車体後方を負圧気味にすることで、強制的にボディ床下から空気を引き抜かせる効果があるということである。
このことはボディ下面の流速が速まっていることからも明らかである。
ダックテール装着によってリアディフューザーの本来のポテンシャルを引き出すことができるというわけである。
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ダックテールスポイラーはGTウイングの性能を引き出してくれる「優れモノ」
ダックテールスポイラーの効果は「リアディフューザー」だけでなく、「GTウイングの性能」までも引き出すことができる。
まるでGTウイングの「補助」をするように、GTウイングの作り出す空気の流れをダックテールスポイラーが「下から」支える。
その結果、「導風板」のようにダックテールスポイラーが機能し、GTウイングが2枚あるかのように働く。
当然リアのダウンフォースもUPするというわけである。
速く走るためには小さくても「ダックテールスポイラー」が必要!
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速さを求めるなら、たとえ小さくても「ダックテールスポイラー」を装着せよ!
私が86おじさんの86を見て、まず足りないと思ったのは「ダックテールスポイラー」である。
説明してきたように、ダックテールスポイラーは「速さに直結」する。
ダックテールスポイラーは、リアディフューザーの性能を引き出し、GTウイングの性能までも引き出す「優れモノ」である。
ダックテールスポイラーを装着した86おじさんの86は、リアの安定感が増してアクセルを踏めるようになり、サーキットで速くなった。
ダックテールスポイラー装着によって、86おじさんの86と同じことがあなたの愛車でも起こるのは間違いない。
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