なぜ「ガーニーフラップ」を付けるとダウンフォースを稼げるのか
出典:S660 Modulo X
L字アングルみたいなものが「ガーニーフラップ」
ガーニーフラップとは、ウイングなどの後端に付けるL字アングルのようなものである。
上の画像ではボディ同色の白いウイングの後端に黒いガーニーフラップが装着されていることがわかる。
SUPER-GTやF1などの速さを求めたレーシングカーにおいて、ほぼ100%に近い割合で装着されているメジャーなエアロパーツである。
もちろん、ガーニーフラップを装着することによって速くなるからこそ装着されているのだが、どのような理屈でどんな効果があるのかよくわからない人も多いのではないだろうか?
そこで今回は、「ガーニーフラップ」はどんなものなのか、どうやって空力的な効果を発生させているのかお話することとする。
「ガーニーフラップ」の効果とは?
出典:マクラーレンF1
ダウンフォースを稼ぐ
ガーニーフラップを装着する理由は「ダウンフォースを稼ぐため」である。
そのためF1ではもはや引っ張りだこの活躍で、リアウイングなどに装着されていることが上の画像からもわかる。
(最近のF1はやたらとゴテゴテしててかっこ悪いと思うのは私だけ…?)
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F1はとにかくダウンフォースを追求するスタイルである。
そのため車体前と後ろに仰々しいウイングを装着し、少しでもダウンフォースを稼ごうと必死である。
そんなF1の要求に応え、ダウンフォースを効果的に発生させる「ガーニーフラップ」は一体どんなメカニズムでダウンフォースを発生させているのだろうか?
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なぜ「ガーニーフラップ」でダウンフォースを稼げるのか
出典:ガーニーフラップ(みんカラ)
ウイング上面の空気の流れを堰き止める効果
上の画像を見ればわかるように、ガーニーフラップはどう見ても「空気抵抗」になりそうな形状なのである。
わかりやすく言うと、ウイング上面に末端に「壁」があるのと一緒であり、ウイング上面の空気の流れを悪くする方向に作用するのは誰が見てもわかると思う。
ここがポイントで、ガーニーフラップを用いる最大の理由は、「ウイング上面の流れを堰き止めること」である。
普通に考えたら、空気抵抗を減らしつつダウンフォースを稼ぐことを考える。
ウイング上面の流れを堰き止めるなんて頭おかしいんじゃないかと。
だがそれがポイントなのだ。
ウイング上面の流速が落ちることによってもたらされる効果
ガーニーフラップをウイング上面の後端に装着することによって、ウイング上面の流速は落ちる。
反対にウイング下面の流速は相対的に上がる。
これが何を意味しているのかあなたはわかるだろうか?
そう、これは「ベルヌーイの定理」の応用なのである。
ベルヌーイの定理はエネルギー保存則と同じ考え方であるから、流速が落ちる=運動エネルギーが落ちると圧力エネルギーが高くなるのである。
簡単に言えば流速が落ちることで圧力が高く(正圧)なるのである。
反対に流速が相対的に速まったウイング下面は、ベルヌーイの定理より圧力が低く、負圧になる。
ガーニーフラップ=圧力差を生み出すもの
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圧力差によってダウンフォースを稼ぐ
ガーニーフラップを装着することでウイング上面を圧力が高い状態にし、ウイング下面は反対に圧力を低い状態にする。
ウイングの上面と下面で「圧力差」を生じさせるのがガーニーフラップの仕事である。
自然界では「圧力差」はなくす方向に働く。
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車体前後の圧力差によって車体が後ろに引き込まれてしまうのと一緒で、ウイングの上面と下面で生じた圧力差は高い方から低い方へ移動することで解消される。
つまり、ウイング周辺は下に移動することで圧力差を解消するのである。
この下向きの力こそが「ダウンフォース」である。
ガーニーフラップはウイング上面と下面の圧力差を生み出すことで、効率よくダウンフォースを稼ぎ出しているということだ。
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ガーニーフラップ装着でどれくらいダウンフォースを強化できる?
出典:ムーンクラフト
ガーニーフラップ追加で、GTウイングは「1.2倍」効く
上の画像はGTウイング単体と、GTウイングに高さ10mmのガーニーフラップを装着した状態で、ダウンフォースの量を比較したグラフである。
これを見ると、高さ10mmのガーニーフラップをGTウイング上面の末端に装着することで、ガーニーフラップ無しの状態に比べて「1.2倍」のダウンフォースを発生させることがわかる。
ガーニーフラップを付けることで、無しの状態に比べて6度もGTウイングを寝かせても同等のダウンフォースを発生することができる。
つまり、空気抵抗をあまり増やすことなく、強力なダウンフォースを発生させるため、ガーニーフラップ装着で速く走れるようになるのである。
私も愛車S2000に装着した無限リアウイングを「ガーニーフラップ無し」で使っているので、早くガーニーフラップを装着してどれだけ変化するのか試してみたい。
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