フロントのダウンフォースのカギを握る「フロントアンダーパネル」の効果を最大限に発揮させる方法
86おじさんの86
フロントアンダーパネルってどんなもの?
86おじさんの86に装着したアンダーパネルは「ハンマーヘッド」みたく大きなものだが、アンダーパネルが先に伸びたと考えれば同じものである。
今回86おじさんの86はGUNMA-17特製の「ドライベニヤ」によって自作したが、通常はFRPやアルミで作製するのが基本である。
お金持ちやガチ勢は本物の「ドライカーボン」で軽さと強度を両立したものを選ぶ。
しかし、プロジェクトGでは「超低コストで100%機能する突貫空力チューン」が至上命題なので、ホームセンターで入手できるドライベニヤ(コンパネ)でフロントアンダーパネルを作製した。
そこで今回は、86おじさんの86に装着した「フロントアンダーパネル」を優れたエアロパーツ化するための設計思想をお話することにする。
なぜ「フロントアンダーパネル」を付けるのか?
86おじさんと86
車体下部が凸凹しているから
人の目に見える車体部分はとてもきれいに滑らかなボディ形状をしているが、車体下部はかなり凸凹としている。
実際86おじさんの86は「昭和の車」であり、床下は凸凹がひどい。
最新スポーツカーに負けているのは車体床下の空力にある、といっても過言ではないレベルである。
例えるなら東京のビル群のようであり、東京に建ち並ぶビルの高さはそれぞれ異なり、真横から眺めるとずいぶんと高低差(=凸凹)があるのである。
実際の車体下部も東京のビル群のようになっている車がほとんどである。
車体下部が凸凹だと空気抵抗になる
流体がある管の中を通るとき、例えば水道のホース内を水が通るときの流速分布はホースの壁側とホース中央では異なる。
流速はホース中央が最も速く、ホース壁面近くが最も遅い。
これは「粘性抵抗」によるものである。
洗車をすると燃費は伸びるのか?粘性抵抗を制御することで燃費は上がるのか実験してみた
粘性抵抗をホースの例で説明すると、ホースの壁面はぱっと見は平らだが顕微鏡などで倍率を上げてみると表面が凸凹している。
目に見えないようなホース表面の凸凹が抵抗となって、ホース壁面近くの水の流速が落ちるということである。
これと同じようなことが車体下部でも起きているといえる。
アンダーパネルを付けるとダウンフォースが発生するワケ
プラダンでフロントアンダーパネルを自作し、床下をフラットボトム化せよ!
凸凹が無くなって流速が上がるため
アンダーパネルを装着することによって車体下部の凸凹をフラットにすることができる。
その結果、空気抵抗を大幅に軽減でき、アンダーパネル下を流れる空気の流速は一気に速くなるのである。
流速が上がるとベルヌーイの定理より、アンダーパネル下の圧力が低くなり、圧力差によってダウンフォースを発生させることができる。
ダウンフォースが発生する原理や仕組みは市販車とF1で変わらない理由
流速を上げる工夫をすればダウンフォースを稼げるようになるため、車体床下の空力はきちんと作りこめれば半端じゃないくらいの効果がある。
86おじさんの86もセンター部がひどい凸凹なのでアンダーパネルを作って装着したかったが、納期(12/13の86祭り本番)に間に合わないので泣く泣く断念したのである。
そのため、アンダーパネルの代わりに雨どいでサイドスカートを設計し、センター部の空力マイナス部分をカバーしようとしたのである。
「サイドスカート」でグラウンドエフェクト効果を生み出し、コーナリングスピードを上げる方法
アンダーパネルの性能を引き出すヒント@前に長くしてハンマーヘッド化する
出典:アンダー鈴木
前に張り出しているほど「グラウンドエフェクト」を有効活用できる!
とんでもなく速いチューニングカーはどれもこれも「ハンマーヘッド」みたいなアンダーパネルを装着している。
これには理由があり、アンダーパネルを前に張り出すほど「グラウンドエフェクト」を有効活用できるからである。
グラウンドエフェクトは、飛行機が着陸するときに地面との距離が近づくとウイングの性能が上がる、あの現象である。
これと同じことがハンマーヘッド化したアンダーパネルで発生する。
そこで86おじさんの86に装着するアンダーパネルは、従来86おじさんが自作したものよりも「10cm」前に張り出すことにした。
グラウンドエフェクトを有効活用し、更なるダウンフォースを86おじさんの86に発生させるためである。
これにより、更なるコーナリングスピードUPを実現させるのが空力設計の狙いである。
「サイドスカート」でグラウンドエフェクト効果を生み出し、コーナリングスピードを上げる方法
アンダーパネルの性能を引き出すヒントA先端は丸める
残ながらドライベニヤは板厚10mmくらいしかなくて薄くて丸められなかった!
アンダーパネルの先端は丸めるのが「大前提」である。
先端を丸める理由は「車体が前後方向にピッチングするため」である。
アクセルやブレーキによって前後に荷重移動を起こすため、アンダーパネルの周りを流れる空気の流れは安定しない。
走る以上どうしようもない事態に備える知恵が「先端を丸めること」なのである。
先端を丸めることで、ブレーキング時でもアンダーパネル先端に当たる空気の流れを安定して床下に送り込むことができる。
その結果、アンダーパネルの効きが安定していて「マイルドで乗りやすい」車に仕上がるというわけである。
当然86おじさんの86に装着するアンダーパネルも先端を丸めたかった。
だが、板厚10mm程度のドライベニヤではGUNMA-17でも難しいため、ピーキーになるのを覚悟で先端を日本刀のように尖らせたのである。
空力設計的には「ドライベニヤだと先端を丸められないので、空気抵抗を減らす方向にしましょう」というわけである。
アンダーパネルの性能を引き出すヒントB基本はフラット
出典:自作フロントアンダーパネル(みんカラ)
基本はフラット
フロントアンダーパネルは基本的にフラットが基本である。
というのも市販車の大半は車体下部が凸凹であり、アンダーパネルによってフラットにすることが目的である。
つまり自己流で訳の分からない変な形状を作り込むくらいなら、余計なことを考えずにフルフラットにした方がアンダーパネル本来の性能を発揮できるということである。
その方が余計な空気抵抗を増やすことがないので「基本はフラット」と考えればよい。
アンダーパネルの性能を引き出すヒントCなるべく低めで空気を取り込む形状にする
出典:ASM
なるべく低めに設置し、先端中央部は「空気を取り込む形状」にする
フロントのダウンフォースをより強力にするため、フロントアンダーパネルは低ければ低いほど効果が高い。
もちろん限度はあるが、実用性を無視すれば地面スレスレが効果的である。
また、アンダーパネルの先端中央部は「空気を取り込む形状」にするのが望ましい。
86おじさんの86でもアンダーパネルの形状はサイドはなるべく低く、先端中央は空気を取り込むような形状にしたかったのだが、ドライベニヤの突貫工事ではGUNMA-17でも難しい。
本番に間に合わせるため、やむを得ずドライベニヤを平面の板そのままでアンダーパネル化したというわけである。
また、ボルテックスジェネレーターでフロントダウンフォースを稼げるか?フロント車体下のアンダーパネルで実験せよ!のように、アンダーパネル先端にボルテックスジェネレーターも効果的である。
アンダーパネルの性能を引き出すヒントDアップスイープ形状を取り入れる
出典:フロントアンダーパネルとフロントバンパー
角度を付けるとより効果的にダウンフォースを発生できる
単なるフラットではなく「アップスイープ」形状を取り入れると良いということである。
そこで考えなければならないのは「空気の流れる形」である。
アンダーパネルを前下がりで装着することで、アンダーパネル下を流れる空気は上向きに向きを変える。
その反作用によってアンダーパネルは下向きの力(ダウンフォース)を獲得することができる。
だがこれも限度があり、角度を付けすぎると空気が剥離してしまいアンダーパネルの効果は激減する。
また、レーシングカーなら露知らず、市販車ベースのチューニングカーではなかなか思い通りに設置できないのが現実である。
できれば86おじさんの86も、タイヤハウス前などで局所的にアップスイープ形状にして、ダウンフォースを引き出す設計にしたかったが、納期の前に撃沈した。(笑)
フロントアンダーパネルを装着する際の注意点
「ジャッキ+ウマ」ではなく、あえてガレージに「リフト」を設置するメリットとは?
取り付けはしっかりと行う!
フロントアンダーパネルはそれだけで強力なダウンフォースを発生させることができる優れた空力デバイスである。
そのため、取り付けには十分注意が必要である。
グラウンドエフェクトにより下向きに引っ張る力が強く掛かるため、取り付けは必ずボルトやステーなどでしっかりと固定する必要がある。
間違っても両面テープのみや、バンパーに固定しただけなど手を抜かないように。
最悪は外れて事故になる危険性があることをお忘れなく。
加工&取付はDIYのプロ「GUNMA-17」の腕の見せ所だ!
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