「スワンネック」が従来型GTウイングより強力なダウンフォースを発生させる理由

出典:白鳥(スワン)

 

GTウイングは「スワンネック」に進化

スーパーGTなどに代表されるレースの世界において、GTウイングはもはや当たり前の「空力パーツ」である。

 

そんなレーシングガーの世界で、近年大きな変化があった。
立て過ぎ厳禁!「GTウイング」は使い方次第でデチューンになる 

 

それは「スワンネック」タイプのGTウイングの登場である。

 

スワンネックとは文字通り「白鳥の首」である。

 

上の画像のようにGTウイングのウイングステーが白鳥の首のような形をしていることから、新形状のGTウイングは「スワンネック」と呼ばれている。

 

従来のGTウイングよりもスワンネックの方が速く走れることがレースの世界で認められており、現在ではチューニングカーの世界まで普及してきている。

 

そこで今回は、「なぜスワンネックタイプのGTウイングが、従来型のGTウイングよりも効果的にダウンフォースを発生させることができるのか」という疑問についてお話していきたいと思う。

 

速く走るための空力チューン大特集! 

 

 

 

今までのGTウイングと「スワンネック」の違い

出典:スワンネック

 

出典:VOLTEX

 

違いは「GTウイングを固定する場所」にある

スワンネックタイプのGTウイングと従来型GTウイングの違いは「GTウイングを固定する場所」にある。

 

従来型GTウイングはGTウイングの下面で固定していたが、スワンネックタイプのGTウイングはGTウイングの上面で固定している。

 

上の画像を見て頂ければよく分かると思うが、従来型GTウイングはウイングステーがトランクから一直線に伸びているが、

 

対するスワンネックタイプのGTウイングはトランクから伸びるウイングステーが途中で折れ曲がっていることがわかる。

 

この違いによって、スワンネックと従来型GTウイングの空力性能が変わってきているのである。

 

「ダックテール」スポイラーだけが持つ、GTウイングには無い意外な空力効果とは? 

 

なぜ「スワンネック」の方がダウンフォースを稼げるのか?

出典:スーパーGT

 

ダウンフォースを稼ぐ方向に「流速の差」を作りやすいため

GTウイングは2つの空力効果によってダウンフォースを発生させている。

 

これは飛行機を飛ばす力を下向きに発生させたものと同じである。

 

飛行機はあの重たい機体を「空力」によって空に浮かせている。

 

その力の1つはGTウイングの上側と下側の流速差によって生じる圧力差「ベルヌーイの定理」によるものである。

 

流れの速いGTウイング下側はベルヌーイの定理より圧力が下がり、反対に流れの遅い上側は圧力が上がる。

 

つまりGTウイング下側が負圧になり、上側が正圧になる。

 

その結果、GTウイングの上下の圧力差によって車体にダウンフォースが発生するのである。

 

なぜGTウイングは「ハイマウント」で「幅広サイズ」なほどダウンフォースを稼げるのか

 

スワンネックは理に適っている

GTウイングは上側の流速を遅く、下側の流速を速くすればするほど、ダウンフォースは強力になる仕組みである。

 

従来型のGTウイングはウイング下側にウイングステーが固定されているために空気の流れが乱され、GTウイング下側の流れを遅くしてしまっていた。

 

これはGTウイングにとってはマイナスである。

 

流速が落ちてしまうウイングステー固定部をGTウイング上側に持ってくることで、

 

「GTウイングの上側の流速を遅く、下側の流速を速く」というダウンフォース発生メカニズムの理に適った配置にすることができる。

 

これは「ガーニーフラップ」の考え方と全く同じ理由で説明できる。

 

なぜ「ガーニーフラップ」を付けるとダウンフォースを稼げるのか 

 

実はスワンネックが「翼端板」としても作用してる可能性

 

出典:VOLTEX

 

スワンネックはGTウイング両端のダウンフォース発生効果をUPさせる?

「GTウイングが発生させるダウンフォースのうちの70%は、GTウイングの端っこの30%で発生する」ということはなぜGTウイングは「ハイマウント」で「幅広サイズ」なほどダウンフォースを稼げるのかにてお話した。

 

意外に思うかもしれないが、GTウイングは全面でダウンフォースを発生させているのではない。

 

なぜこんなことが起こるか?

 

それは、車体に取り付けることで生じる、GTウイングに当たる空気の流れ方に関係している。

 

サーキット等でダウンフォースが欲しい高速域になるほど、ルーフを通過した空気は剥離してしまい、

 

GTウイング中央に綺麗に風が当たらなくなってしまい、ダウンフォースは思いのほか少なくなってしまう。

 

それに比べてGTウイング両端はルーフがなく、車体横を綺麗に流れてきた空気が当たるため、狙い通りのダウンフォースを発生させることができるというわけである。

 

スワンネックのウイングステーが「翼端板」になる?

スワンネックのウイングステーはGTウイング上側に付いている。

 

これをよく見ると、まるで「翼端板」のような働きをしていることが考えられる。

 

つまり、スワンネックのウイングステーが上側にあることで、車体横を綺麗に流れてきた空気を逃がさずGTウイング両端に当てることができる。

 

そうすることで、なぜスピードが上がれば上がるほど「ダウンフォース」は発生するのか?に書いたように、GTウイング両端のみ「スピードを上げた状態」にすることができるかもしれない。

 

スワンネックについてこんな説明は見たことも聞いたこともないが、論理的に考えてスワンネックは有効な「空力パーツ」であるのは間違いなさそうだ。

 

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